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【職場のメンタルヘルス改善】「セルフケア」の基礎知識

社員を大切にしたい 2021年12月1日

仕事による強い不安やストレスを感じる労働者の割合は54.2%(2020年)、労働災害の精神障害に関する支給決定件数は608件(2020年度)に上るなど、メンタルヘルス不調の問題は深刻です。
メンタルヘルス不調は、できるだけ早期の段階でケアすることが重要で、次の「4つのケア」が基本になります。

  1. セルフケア
  2. ラインケア
  3. 事業場内産業保健スタッフによるケア
  4. 事業場外資源によるケア

それぞれのケアの概要は次章でお伝えしますが、4つの中でも特に重視されているのが、1.セルフケアと2.ラインケアです。この記事では、セルフケアにフォーカスします。また、ラインケアについては、次の記事が参考になるので、併せてご確認ください。

■【産業医監修】ラインケアとは? 目的と必要性、メリットと組織の取り組み方を解説■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300077/

■ラインケア研修とは? 研修の目的や効果、内容を徹底解説!■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300078/

メンタルヘルスの4つのケア

職場のメンタルヘルスケアの指針として、厚生労働省は「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」を公表しています(2006年に策定・2015年改正)。指針では、事業者に対して、労働者のメンタルヘルスケアを目的とした「心の健康づくり計画」を作成・実施することを求めています。
この計画を実施するためには、「4つのケア」が重要とされています。

1)セルフケア

セルフケアとは、労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減、あるいはそれに対応することです。年に1度実施されるストレスチェックの結果から、自身のストレスの状況を把握し、事業場内の産業保健スタッフや事業場外資源による支援を受けることが推奨されています。
事業者は、労働者がこのようなセルフケアが行えるように、教育研修や情報提供などの支援をすることが重要です。また、管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、事業者はセルフケアの対象として、管理監督者も含める必要があります。

2)ラインケア

ラインケアとは、経営者や管理監督者が中心となり、職場の環境の整備を行ったり、労働者の相談を受けたりすることです。
事業者は、労働者のメンタル不調が疑われた場合には、事業場内の産業保健スタッフにサポートを依頼できる体制にすることが重要です。

3)事業場内産業保健スタッフによるケア

事業場内産業保健スタッフによるケアとは、産業医や産業保健師など、事業場内に所属する医療専門職や衛生管理者、産業カウンセラー、メンタルヘルス推進担当者などにより実施されるケアのことです。
事業場内産業保健スタッフには、労働者や管理監督者からの相談を受け付けるだけではなく、セルフケア、ラインケアを実行できるようにセミナーを開催することなどが求められます。

4)事業場外資源によるケア

事業場外資源によるケアとは、医療機関(精神科医や心理カウンセラーなど)やEAP(従業員支援プログラム)などを指します。
セルフケアの一環としての保健指導や、ラインケアのセミナーの開催などをしてくれます。

上記4つのケアが適切に実施されるよう、関係者が相互に協力して取り組みを進めることが効果的とされています。

セルフケアの具体的な取り組み

1)ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解

メンタルヘルスへの理解は進んできたものの、メンタルヘルス不調に対してネガティブなイメージを持つ労働者はいまだに多いものです。また、メンタルヘルス不調は、けがや病気などと異なり周囲からは分かりにくいため、「サボっている、甘えていると思われるのでは」などと考えがちです。
メンタルヘルス不調は、誰でもなる可能性があること、そして回復できることなど、正しい知識を理解することが不可欠です。理解を深めるためには、次のような方法があります。

1.セミナー・研修の実施

メンタルヘルスに関する正しい知識や、セルフケアの方法などを学ぶセミナーなどを実施します。セミナーなどの委託先としては、産業医やEAP(従業員支援プログラム)などがあります。この他、産業保健総合支援センター(さんぽセンター)に相談してもよいでしょう。
同センターは、労働者健康安全機構が運営しており、各都道府県に設置されています。事業者や労働者向けのセミナーなどを実施しています。

■労働者健康安全機構「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」■
https://www.johas.go.jp/shisetsu/tabid/578/default.aspx

2.情報提供

メンタルヘルスケアに関して情報提供をします。例えば、「こころの耳」は、日本産業カウンセラー協会が厚生労働省から受託し、運営しているサイトです。セルフケアやラインケアに関して、解説資料も掲載されていますので、メンタルヘルス対策の初めの一歩として活用してもよいでしょう。
職場内でこのサイトを共有し、個々がストレスの状況を知り、その対策のために活用してもらいましょう。

■「こころの耳」■
https://kokoro.mhlw.go.jp/

2)ストレスチェックなどを活用したストレスへの気付き

メンタルヘルス不調が悪化する前に、正しく労働者自身の状態を把握してもらうことが不可欠です。具体的には、次のような方法があります。

1.ストレスチェックを実施

ストレスチェックは労働者が自身のストレス状況を認識するために活用することができます。また、集団分析を実施することにより、職場全体のストレスの度合いも分かります。
ストレスチェックについては、次の記事で制度の概要や実務上の注意点を紹介しているのでご確認ください。

■「コロナ禍で重要性が高まる? ストレスチェック制度の実務のポイント」■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300002/

2.EAP(従業員支援プログラム)を提供

EAPとは、メンタルヘルス不調の労働者を支援するプログラムのことです。前述した4つのケアのうち、事業場外資源によるケアに該当し、職場内の関係者に知られることなく、メンタルヘルスに関するケアを受けることができます。
労働者の中には、産業医を含めた職場内事情に詳しい関係者への相談に抵抗を感じる方もいます。労働者が相談しやすい環境をつくる上でEAPを活用できます。

3)3つのRを意識したストレスへの対処

ストレスはためすぎないよう、小さなうちに対処することが重要です。その際、3つのR(Rest・Recreation・Relax)を意識するのが効果的とされており、労働者にもこれを実践するように勧めましょう。

具体的には、次のような方法があります。

1.Rest:休息、休養、睡眠

意識的に、休息や休養をしっかり取ることです。規則正しく睡眠を取るようにします。また、仕事中でも席を立って歩く、コーヒーを飲むなど、疲労が蓄積する前に短い休憩を取ることも効果的とされます。

2.Recreation:趣味・娯楽や気晴らし

休日は、好きなことに夢中になる時間をつくります。仕事から離れて、気分転換する時間をつくることが大切です。

3.Relax:ストレッチ、音楽などのリラクセーション

疲労が蓄積したり、緊張状態が続いたりすると、体に力が入ります。呼吸を落ち着かせたり、筋肉の緊張を和らげたりするストレッチなどをすると効果的です。
また、就寝前に音楽を聴くなど、リラックスできる時間を設けます。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年10月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者:佐藤乃理子 産業医・労働衛生コンサルタント

佐藤先生

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究に当たった。2010年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、2013年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。2015年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。2020年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルの在り方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の代表取締役を務める。

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