リスクにそなえたい

2016年2月29日

会社と社員を守る。労災の法定補償と法定外補償

リスク管理 人事労務

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安全配慮義務としての「労働災害」対策

会社には、社員が生命や身体の安全が確保された状態で働けるように配慮する、いわゆる「安全配慮義務」があります。この義務を果たすために必要な取り組みの一つが、労働災害の防止です。

近年、労働災害は多様化しています。足場から転落して骨折するといったケースだけではなく、過労死やパワーハラスメントに関する事案も増えており、労働災害を未然防止することは以前にも増して難しくなってきています。

会社は、被災した社員やその家族のことをおもんぱかり、いま一度、労働災害対策について考える必要があるでしょう。本稿では、労働災害が発生した場合の備えをどのように確保するかという視点から、いわゆる法定補償と法定外補償の基本をまとめます。

法定補償と法定外補償の関係

労働災害の備えには、政府管掌の「労災保険」と、民間の保険会社の「私的な保険(任意の保険)」への加入などがあります。

法定補償と法定外補償の関係

政府管掌の「労災保険」は、労働者災害補償保険法(以下「労災法」)に基づく公的な保険で、一般的に「労災保険」と呼ばれる労働保険の一種です。労働者を1人でも雇用する会社は必ず加入しなければなりません(一部、例外あり)。労災法で給付(支給)額などが定められた制度なので、「法定補償」と呼ばれます。

一方、民間の保険会社の「私的な保険」は、企業が任意に加入するものです。労災法で定められた制度ではないため、「法定外補償」と呼ばれます。

法定補償の概要

法定補償では、業務に密接に関係して発生する業務災害、通勤途中(単身赴任先と帰省先住居間の移動中などを含む)で発生する通勤災害に対して保険給付などを行います。ここでは、業務災害に関する法定補償の内容を紹介します。なお、以下の説明は簡略化したものなので、詳細は労働局などにお問い合わせください。

1.療養補償給付
業務災害による傷病のため、労災指定病院で療養を受けるときに、必要な療養の給付(現物給付)が受けられます。

2.休業補償給付
業務災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないときに、休業4日目から支給されます。

3.障害補償年金
業務災害による傷病が治った後に一定の障害が残ったときに、障害の程度が障害等級1級~4級に該当した場合に年金として支給されます。

4.障害補償一時金
業務災害による傷病が治った後に一定の障害が残ったときに、障害の程度が障害等級8級~14級に該当した場合に一時金として支給されます。

5.遺族補償年金
業務災害により死亡したときに、遺族の人数などに応じて支給されます。

6.遺族補償一時金
遺族補償年金を受け取る遺族がいないときに、一定の条件のもとで支給されます(遺族補償年金の受給権のない遺族に支給されます)。

7.葬祭料
業務災害により死亡した者の葬祭を行うときに支給されます。

8.傷病補償年金
業務災害による傷病が療養開始後1年6カ月を経過した日または同日後において、傷病が治っていないときに支給されます。

9.介護補償給付
障害補償年金または傷病補償年金受給者のうち、一定の基準を満たし、現に介護を受けているときに支給されます。

10.二次健康診断等給付
定期健康診断などの結果、一定の項目について異常の所見があるときに、二次健康診断などが実施されます。

法定外補償の概要

法定補償は比較的手厚いものの、これだけでは被災した社員やその遺族の生計を十分に維持できないのが実情です。そこで、特に労働災害が多い製造業、建設業、運輸業などが任意で法定外補償に加入しています。

法定外補償は、民間の損害保険会社が提供する私的な保険であり、休業補償、障害補償、遺族補償が中心となっています。補償額は個々の会社の方針で異なりますが、障害補償の一つの目安は、障害等級第1級で退職した場合で3000万円程度です。

また、冒頭で紹介した通り、会社には「安全配慮義務」がありますが、労働災害が発生した場合、被災した社員やその遺族から「安全配慮義務」違反として会社が損害賠償請求を受けることがあります(既に法定給付で支給された金額は損害賠償から差し引かれます)。

特に近年は、うつ病などの精神疾患が労働災害として認定されるケースが増えています。労働災害として認定されるということは、うつ病などが業務に密接に関係して発生していると判断されたということです。直近のデータを見ると、2014年度における精神障害の労働災害の請求件数は1456件、また、これまでに労働災害と認定された件数(支給決定件数)は497件となり、いずれも過去最高となりました。

足場からの転落などと違い、うつ病などの防止は定型化できるものではありません。法定外補償の多くは、被災した社員などからの損害賠償請求についてもカバーしています。労働災害対策が難しくなっている現在、万一の備えとして法定外補償への加入を検討するのも一考に値するかもしれません。

以上
(監修 特定社会保険労務士 岡西淳也)

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年3月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者日本情報マート

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