リスクにそなえたい

2016年3月30日

中小企業にも必要な「BCP」。その実効性を高めるには?

BCP リスク管理 組織運営

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自然災害を経て

自然災害に遭っても、中核事業を中心に企業の営みを止めることなく継続する。そのための計画を「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」と呼びます。また、BCPと車の両輪の関係にあるのが「BCM(Business Continuity Management:事業継続管理)」です。BCMは、BCPを有効に機能させるための教育や訓練のことを指します。

自然災害が多い日本では、かねてよりBCPやBCMの重要性が叫ばれてきました。しかし、未曽有の災害に見舞われると、多くの企業が長期間の休業を余儀なくされ、BCPが十分に機能しないという課題が浮き彫りになりました。理由はいくつもありますが、その一つに「BCPが実行できない」ことがあります。地震の際、私たちは財布やスマートフォンさえデスクに置いたままで避難してしまうほどパニックになります。そうした中で冷静にBCPを実行しようと考えるなら、定期的な見直しと予行演習が不可欠になります。

地震や豪雨など自然災害はある日突然やってくるものです。経営者はいま一度自社のBCPを確認する必要があります。本稿では、もう一度基本に立ち返るという意味で、BCPの基本を紹介します。

BCPの基本構成を確認する

BCPの基本構成は、中小企業庁が公開している「中小企業BCP策定運用指針」を見れば分かります。「中小企業BCP策定運用指針」では、様式に従って基本方針、責任者、緊急連絡先などを記入するだけで基本的なBCPを策定できるフォーマットを公開しています。また、企業の実情に応じて選択できる「入門コース」「基本コース」「中級コース」「上級コース」の4つのコースがあります。「中小企業BCP策定運用指針」によると、「基本コース」の概要は次のとおりです。

BCP基本コースの概要

「中小企業BCP策定運用指針」などを参考にすれば、BCPの策定自体はそれほど難しいものではありません。BCPにおいて難しいこと、そして最も大切なことは、「災害が発生したときに、効果的に機能するBCPを策定する」ということです。当然ですが、いくら立派なBCPを策定しても、事業の早期復旧に役に立たないのであれば意味がありません。次章では、本当に「使える」BCPを策定するために注意すべきポイントを紹介します。

本当に「使える」BCPを策定するためのポイント

1)使えるBCPを策定する際の大前提:社員の生命の安全確保

災害発生時に、何より大切なのは社員の生命の安全確保です。これは従来の「防災対策」の範ちゅうに入りますが、まずはこうしたことが、しっかりできているのか確認するようにしましょう。例えば、「水、食料などの生活必需品を最低でも3日分準備し、社員が帰宅できない状況でも対応できるようにする」といった基本的な点を押さえておくようにしましょう。

2)連絡手段を確保する

災害の発生直後などは通信回線が混み合うため、思うように連絡がとれなくなることがあります。連絡がとれなければ、BCP実行に当たって必要となる指示などが出せないだけではなく、社員の安否確認すらままならなくなってしまいます。そのため、固定電話・スマートフォン・パソコンなど、複数の通信機器からアクセスが可能な手段を確保するようにしましょう。

なお、安否確認に関しては、安否確認用のサービスである「災害用伝言ダイヤル」「災害用伝言板」といったものもあります。この他にも、スケジュール管理機能や文書の共有機能などが一つのシステムに統合された「グループウェア」を活用する方法もあります。また、TwitterやLINEなどのアカウントを共有しておくことなども検討するとよいでしょう。

3)身の丈に合ったBCPを策定する

使えるBCPにするには、「身の丈に合ったBCPを策定する」という点を常に意識しておくことが大切です。例えば、「中核事業から復旧していく」というBCPは、見方を変えると「重要性の低い事業(=復旧を急がない事業)」を決めることです。事業に愛着の強い社長などにとっては、こうした判断は意外と難しい場合もあるでしょう。かといって「あれもこれも」と中核事業の絞り込みを適切に行わなければ、「どれも復旧させることができない」といったことにもなりかねません。

また、「どんな災害にも耐え得るBCP」などと欲張ったBCPを策定しようとすれば、その分、講じるべき対策などが多くなり、結局、不十分な内容となってしまうことにもなりかねません。こうしたことにならないように、自社の実情に合ったBCPを策定するようにしましょう。

4)社員へ周知徹底する

BCPの実効性を確保するためには、全社員への周知徹底が不可欠です。BCPの内容を周知することはもちろん、「電話連絡網および緊急時通報」「バックアップしているデータを取り出す」など、BCPの一部を取り上げた訓練を繰り返し、社員に手順を着実に習得させるようにしましょう。

また、BCPを小さな冊子などにまとめ、全社員が携帯しておくということも大切です。災害が発生したときに、身近にBCPがなければ、社員は適切に動くことはできません。このような一見ささいなことでも、できている企業とできていない企業で、BCPの運用に大きな違いが出るので注意が必要です。

5)BCPは定期的に見直す

BCPは策定したら終わりというものではありません。例えば、入社・退社する社員や引っ越しなどにより連絡先が変わる社員がいたりするので、連絡先リストは定期的に更新しなければなりません。また、中核事業に関わる取引先の変更など、社内外の連絡先などに変更が生じることもあります。場合によっては、事業構造の変化によって、そもそも中核事業自体が変わってしまうこともあるでしょう。

このように、時間とともに会社を取り巻く環境は変化します。そのため、定期的にBCPの内容をチェックし、必要に応じて見直しをします。また、BCPに対する教育・訓練を積極的に行うことも不可欠です。BCPに対する経営者の前向きな姿勢を企業文化として定着させることで、「BCP文化」が組織に根付いていきます。

今、できることから始める

BCPの策定に際して必ず直面する壁が「取り組んだほうがよいのは分かっているが、資金や人材不足などで取り組めない(十分な取り組みができない)」ということです。これは経営資源に限りがある以上、どのような企業であっても避けて通ることはできません。大切なことは、ここでBCPの策定を諦めてしまうのか、できることから取り組みを始めるのかということです。

言うまでもなく、災害はいつ発生するか分かりません。そうした意味では、できることから取り組みを始めることが、災害発生後の企業の存続を左右する大きな要因になるといえるのかもしれません。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年3月29日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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