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中小企業にも必要な「BCP」その実効性を高める

リスクにそなえたい 2021年3月11日

中小企業におけるBCPの策定状況

企業が災害、感染症などの緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業を継続・早期復旧するため、平常時の活動や緊急時の事業継続の方法、手段などについて定めた計画を「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」と呼びます。

地震や豪雨などの災害が多い日本では、かねてBCPの重要性が叫ばれてきました。また、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業が休業を余儀なくされ、災害対策だけでなく感染症対策も踏まえたBCPを策定すべきといった声が強まりました。

一方で、中小企業庁「2020年版中小企業白書」によると、BCPを策定している中小企業はわずか12%です。中小企業のBCP策定が進まない理由(複数回答)は次の通りです。

「BCPは難しい」という先入観を捨て、今できることから着手する

「策定に必要なスキル・ノウハウがない」「策定する人材を確保できない」などの理由でBCPの策定が進まない企業は、もしかしたら「BCPは難しい」という先入観を持っているのかもしれません。

BCPというと、「緊急時の体制(意思決定・指揮命令系統など)」「中核事業(企業の存続に関わる重要性(または緊急性)の高い事業)」など多岐にわたる内容を、数十ページの膨大な冊子にまとめるといったイメージがあるかもしれません。

確かに、BCPの要素は多岐にわたりますし、ひな型の中にもページ数が膨大なものは少なくありません。しかし、中小企業の場合、「社員数が少ないので意思決定・指揮命令系統がシンプル」「単一事業のため、中核事業の特定が用意」といった事情から、複雑なBCPを必要としないケースが多くあります。

自然災害や感染症は突然やってくるので、何の対策も講じずに社員と企業を守ることは困難です。そのため、中小企業においては「BCPは難しい」という先入観を捨て、今できることから着手するというスタンスが重要になります。

BCPの全体像を理解する

中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」では、基本方針、責任者、緊急連絡先などを記入することで基本的なBCPを策定できるフォーマットを公開しています。

フォーマットは、企業の実情に応じて選択できる「入門コース」「基本コース」「中級コース」「上級コース」の4つのコースがあります。これからBCPに取り組む場合であれば、まず入門コースに目を通すとよいでしょう。

策定に当たっては、フォーマットを最初から順に記入していくのではなく、BCPの全体像を理解した上で、着手しやすいものから記入していくことが重要です。例えば、入門コースを基にしたBCPの全体像は次の通りです。

本当に「使える」BCPを策定するためのポイント

1)使えるBCPを策定する際の大前提:社員の生命の安全確保

災害発生時に、何より大切なのは社員の生命の安全確保です。これは従来の「防災対策」の範囲に入りますが、まずはこうしたことが、しっかりできているのか確認するようにしましょう。例えば、「水、食料などの生活必需品を最低でも3日分準備し、社員が帰宅できない状況でも対応できるようにする」といった基本的な点を押さえておくようにしましょう。

2)連絡手段を確保する

災害の発生直後などは通信回線が混み合うため、思うように連絡がとれなくなることがあります。連絡がとれなければ、BCP実行に当たって必要となる指示などが出せないだけではなく、社員の安否確認すらままならなくなってしまいます。そのため、固定電話・スマートフォン・パソコンなど、複数の通信機器からアクセスが可能な手段を確保するようにしましょう。

なお、安否確認に関しては、安否確認用のサービスである「災害用伝言ダイヤル」「災害用伝言板」といったものもあります。この他にも、スケジュール管理機能や文書の共有機能などが一つのシステムに統合された「グループウェア」を活用する方法もあります。また、TwitterやLINEなどのアカウントを共有しておくことなども検討するとよいでしょう。

3)身の丈に合ったBCPを策定する

使えるBCPにするには、「身の丈に合ったBCPを策定する」という点を常に意識しておくことが大切です。例えば、「中核事業から復旧していく」というBCPは、見方を変えると「重要性の低い事業(=復旧を急がない事業)」を決めることです。事業に愛着の強い社長などにとっては、こうした判断は意外と難しい場合もあるでしょう。かといって中核事業の絞り込みを適切に行わなければ、「どれも復旧させることができない」といったことにもなりかねません。

また、「どんな災害にも耐え得るBCP」などと欲張ったBCPを策定しようとすれば、その分、講じるべき対策などが多くなり、結局、不十分な内容となってしまうことにもなりかねません。こうしたことにならないように、自社の実情に合ったBCPを策定するようにしましょう。

4)社員へ周知徹底する

BCPの実効性を確保するためには、全社員への周知徹底が不可欠です。BCPの内容を周知することはもちろん、「電話連絡網および緊急時通報」「バックアップしているデータを取り出す」など、BCPの一部を取り上げた訓練を繰り返し、社員に手順を着実に習得させるようにしましょう。

また、BCPを小さな冊子などにまとめ、全社員が携帯しておくということも大切です。災害が発生したときに、身近にBCPがなければ、社員は適切に動くことはできません。このような一見ささいなことでも、できている企業とできていない企業で、BCPの運用に大きな違いが出るので注意が必要です。

5)BCPは定期的に見直す

BCPは策定したら終わりというものではありません。例えば、入社・退社する社員や引っ越しなどにより連絡先が変わる社員がいたりするので、連絡先リストは定期的に更新しなければなりません。また、中核事業に関わる取引先の変更など、社内外の連絡先などに変更が生じることもあります。場合によっては、事業構造の変化によって、そもそも中核事業自体が変わってしまうこともあるでしょう。

このように、時間とともに会社を取り巻く環境は変化します。そのため、定期的にBCPの内容をチェックし、必要に応じて見直しをします。また、BCPに対する教育・訓練を積極的に行うことも不可欠です。BCPに対する経営者の前向きな姿勢を企業文化として定着させることで、「BCP文化」が組織に根付いていきます。

6)地域連携BCPの活用も検討する

中小企業が単独で実施できることには限界があります。例えば、大企業の場合、1つの支店が大地震などで被災しても、他の支店から人員や物資を調達することができますが、中小企業の場合、こうした対応が困難です。そこで検討したいのが、地域企業同士が連携して、防災力・事業継続力の向上を図る「地域連携BCP」です。

企業の事業継続では個社のBCPが基本となりますが、個社のBCPでそれぞれが実施している作業のうちの共通的な部分について、地域連携BCPが適用されます。具体的には、企業間で非常用物資・電源などを共同確保したり、災害が発生した場合に被害が軽度な企業に臨時活動拠点を仮設したりするといった取り組みが挙げられます。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年3月1日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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