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洪水ハザードマップを確認して風水害に備えよう

リスクにそなえたい 2021年3月12日

風水害は、事業を継続するために考慮すべきリスクの1つ

日本列島は台風や集中豪雨などによる風水害が発生しやすく、毎年のように甚大な被害が報告されています。気象庁で記録が公表されている1976年以降、「非常に激しい雨(1時間に50ミリ以上80ミリ未満の雨)」「猛烈な雨(1時間に80ミリ以上の雨)」の年間発生回数は、ともに増加傾向にあります。

雨が降り続くと下水道や河川で処理し切れなくなり、道路の冠水、床下浸水や床上浸水などの被害が発生します。また、山間部では土砂崩れ、河川では氾濫や堤防の決壊の恐れも生じます。特に、猛烈な雨の場合は雷を伴うことが多く、落雷による停電、電車の運行中止などにより都市機能がまひすることもあります。

多くの企業が災害による被害を抑え、事業継続・早期復旧を図るための事業継続計画(BCP)を策定していますが、風水害は企業がBCPの中で考慮すべきリスクの1つです。以降では、主に浸水被害を想定した対策のポイントを紹介します。

洪水ハザードマップを確認する

ハザードマップとは、一般的に「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」のことです(国土地理院ウェブサイト)。中でも、洪水ハザードマップは、地方自治体などが、地域が洪水に見舞われたときの浸水の程度の予測をまとめたものです。洪水ハザードマップによって、1時間に100ミリを超える短時間強雨(いわゆる「ゲリラ豪雨」)の際に、河川が氾濫する可能性の程度と範囲などを知ることができます。自社が立地する周辺の浸水予測を把握しておくことによって、地域の危険性に適した対策を立てることが可能となります。

国土交通省「水情報国土データ管理センター」のウェブサイトでは、川の防災情報(リアルタイム雨量・水位、渇水情報等)、平常時からの防災情報(浸水想定区域図、ハザードマップ)などを公開しており、対策に役立てることができます。

■国土交通省「水情報国土データ管理センター」■
https://www5.river.go.jp/

電源室などは高い所に設置する

洪水によって電源室などが浸水すると、漏電、ショートなどによってメーンの電源が断たれ、社屋全体が停電する恐れがあります。

電源室などは、スペースの都合で地下に設置されるケースが多いものの、浸水対策のためには、できるだけ高い所に設置するのが理想です。それができない場合、非常用電源や予備電源をできるだけ高い所に設置するとよいでしょう。

土のうや防水扉で浸水を防ぐ

生命・財産を守るために、浸水を物理的に防ぐための準備は欠かせません。浸水対策として一般的に行われるのは、土のう(布袋の中に土砂を詰めて用いる土木資材)を積み上げることです。しかし、土のうを積み上げるには時間・手間がかかる上、実際に浸水が始まると隙間などから水が染み込んできたり、土のうが流されたりすることもあります。また、ドアの開放方向に土のうを積み上げてしまうと避難の妨げになるので、置き方にも注意が必要です。

土のう以外の浸水対策として設置が進められているのが防水扉です。これは、軽くて丈夫な素材(アルミやステンレスなどの金属、樹脂シート、ガラス繊維強化プラスチックなど)で作られており、建物の入り口などからの浸水を防ぐことができます。自社が立地している場所が海岸・河川の周辺や下水管から水があふれる可能性があり、特に、地階や地下駐車場などがある場合には、開口部を全て塞ぐタイプの防水扉の設置も検討してみましょう。

社員の安全を確保するための体制を整備する

防災対策を経営に関わる重要課題として位置付け、経営者が統括し、対策を検討する担当責任者やプロジェクトチームを組織し、想定される被害の把握、マニュアルの作成、対策に必要な費用の予算化、自助の取り組みの啓発を行います。具体的には、次のような取り組みが考えられます。

  • 対策の実施体制について話し合い、対策本部やチームの編成、活動内容、担当責任者や責任者不在時に備えた複数の代替者を決め、社員全員に周知する。
  • 防災対策の目的、基本方針を共有し、各自の役割や取るべき対策を理解できるマニュアルを作成し、徹底する。
  • 降雨量によってどの程度の被害が発生する可能性があるのか、シミュレーションを行う。
  • 非常用電源が何時間持つか確認しておく。
  • 非常持ち出し品や救助活動を円滑にするための資材や機材、食料や飲料水を備蓄しておき、定期的に点検する。
  • 定期的に避難訓練を行い、緊急時の避難場所までの経路を確認する。

社員の安否を確認する手段を整備する

風水害は地震と異なり、ある程度予測が立てられるため、対応に時間的余裕がありますが、万一に備えて社員の安否が確認できるようにしておきましょう。具体的には、次のような取り組みが考えられます。

  • 災害時に連絡が取れるように緊急連絡網を整備し、緊急連絡網を記入したカードを全社員に配布し、常時携帯を義務付ける。
  • 災害用伝言ダイヤルや災害用伝言板サービスなどを活用するために、平常時に使い方を覚えるように社員に指導しておく。
  • 法人向け安否確認サービスを導入する。

損害保険への加入、補償内容の確認をする

経済的損失に備える損害保険商品の中には風水害についての補償を選択できるものがあります。気温、風、降水量、日照時間などの気象変動によって被る収益減少、支出増大を補償する「天候デリバティブ」を取り扱っているところもあります。

中小企業の場合、火災や地震への備えは意識していても、水災への備えが不十分であることも多いようです。「水災に対応しており、損害の満額を補償する商品」に加入している割合は29.4%にとどまっており、そもそも自社の加入している保険商品について水災を補償するか否かが「分からない」と回答する企業も18.3%あります(中小企業庁「中小企業白書 2019年版」)。

損害保険会社では、損害保険商品は、各損害保険会社により保険金が支払われる内容が決められているので、契約先の損害保険会社に補償の内容を確認しておくことが重要です。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2021年3月2日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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