この記事のタグ: BCP リスク管理 組織運営

会社のリスクマネジメント入門  

リスクにそなえたい 2021年4月16日

会社を取り巻くリスクの種類

自然災害、製品事故など会社を取り巻くリスクにはさまざまな種類があり、社会環境の変化とともに増えてきています。例えば、顧客情報漏洩などのサイバーリスク、いわゆる“ネット炎上”などによるレピュテーションリスク(風評リスク)、コンプライアンス違反などの不祥事リスク、セクハラ・パワハラ・マタハラといったハラスメントリスクなどがあります。また、新型コロナウイルス感染症のように、想定できなかった新しい感染症の流行などもあります。これらを一覧にすると次のようになります。

一覧に挙げたようなリスクを回避あるいは低減して適切に対応するためには、リスクマネジメントが不可欠であり、経営者の重要な仕事です。

リスクマネジメントと危機管理

リスクマネジメントとは簡単に言うと、あらかじめ、どのようなリスクがあるかを把握し、対策を立てておくことで、損失の回避または低減を図るプロセスです。一方、災害・事故が発生したり、リスクが顕在化したりしたとき、つまり、何か起きた後のダメージを最小限に抑えるクライシスマネジメントに取り組むための備えが「危機管理」です。

会社の活動を「平常時」「緊急時」「収束時」に分けて考えた場合、リスクマネジメントは主に平常時に行うもの、危機管理は主に緊急時、収束時に行うものだといえます。状況別の主な課題と具体的な施策は次の通りです。

リスクマネジメントのポイント

1)リスクマネジメントの考え方

具体的にどのような考え方でリスクマネジメントに取り組むべきなのでしょうか。参考になるのが、次のような考え方です(中小企業庁「2016年版 中小企業白書」)。

●リスクコントロール

  • 回避:リスクを伴う活動自体を中止し、予想されるリスクを遮断する対策。リターンの放棄を伴う。
  • 損失防止:損失発生を未然に防止するための対策、予防措置を講じて発生頻度を? 減じる。
  • 損失削減:事故が発生した際の損失の拡大を防止・軽減し、損失規模を抑えるための対策。
  • 分離・分散:リスクの源泉を1カ所に集中させず、分離・分散させる対策。

●リスクファイナンシング

  • 移転:保険、契約などにより損失発生時に第三者から損失補填を受ける方法。
  • 保有:リスク潜在を意識しながら対策を講じず、損失発生時に自己負担する方法。

リスクコントロールはリスクを防止し、発生した場合の損失をできるだけ低減する方法であり、リスクファイナンシングはリスクが発生した場合の損失を補填するために金銭的な手当てをする方法です。

会社が活動を続けていく上で、リスクを完全になくすことはできません。リスクコントロールによって損失をできるだけ低減し、もしリスクが発生した場合はリスクファイナンシングで補填するという両輪による対策が、リスクマネジメントに取り組むことが肝要です。

2)経営者がリーダーシップを取る

リスクマネジメントは、売り上げなどに直結しないことなどから、社員にとっては後回しにしがちな事項です。だからこそ、経営者が先頭に立ち、危機的状況が発生しても対応できる社内体制を構築といった、リスクマネジメントに取り組むことが求められるでしょう。

また、この他に、次のような取り組みもリスクマネジメントを効果的に実施するために重要です。

  • リスクに対して敏感になるように社員を教育、啓発する
  • 当初は小さな事故
  • 事件と判断されても、後に大事故・大事件に発展することがあるため、事故・事件が発生した場合は、極力情報を収集し、重大性を意識して対応する
  • 事故・事件が発生した場合、地元住民・行政・マスコミに隠さずに情報公開する

また、リスクマネジメントを実効性のあるものとするため、適切な方法や頻度で評価・検証することも重要です。評価・検証の実施に当たっては、第三者機関を利用することも考えます。評価を通じて明らかになった問題点や改善点などは、社内にフィードバックしなければなりません。社会情勢の変化や他社事例なども、自社のリスクマネジメントを是正あるいは改善するための有力な情報源となります。

リスクマネジメントの例:危機管理マニュアルの作成

実際に危機が発生した場合に備えて、あらかじめ危機管理マニュアルを作成しておくことも重要です。ここでは、危機管理マニュアル作成のポイントを見てみましょう。

1)危機管理マニュアル作成で重要なこと

専門の担当部署・担当者をつくり、1~2年をかけて議論・検討を重ねて自社独自のものを作り上げていくのが一般的です。危機管理マニュアルを作るポイントは、次のようなものが挙げられます。

  • 全社員に自社の危機管理について理解させるようにする
  • 危機管理対策の基本方針・目的・目標・事前準備・緊急対応体制・緊急対応措置などを明確にする
  • 危機管理対策における責任者、責任部署、担当者などの役割を明示する
  • 緊急時の行動について、自社の姿勢や考え方を示すことにより、損害が最小限になるよう臨機応変に対処できるようにする
  • 緊急時の対応に漏れがないように内容をチェックできる体制を構築する

2)危機管理マニュアル作成に当たっての留意点

重要なのは、危機管理の水準を継続的に維持・向上させるための実践的な危機管理マニュアルを作ることです。次のような点に気を付けるとよいでしょう。

  • 読む対象者が明確で、内容が体系化されていて分かりやすい
  • 文章が読みやすく、分かりやすい
  • 対策方針や対応方針などが明確化されている
  • 継続的改善の支障となる形骸化を防止するための工夫がある
  • 拡張性および汎用性がある

特に中小企業の場合、自社に合った現実的なものを目指すことが大切です。「実効性のある危機管理マニュアル」とすることが大切です。また、こうした危機管理マニュアルは、作成プロセスにも大きな意味があります。なぜなら、関係者間での活発な議論や検討が、危機管理に対する認識や意識を高めることになるからです。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年4月1日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

関連記事