「債権回収できない!」を防ぐ6つの対策

リスクにそなえたい 2021年7月13日

債権回収(さいけんかいしゅう)とは

債権とは、売掛金の支払いや商品の引き渡しなどを求める権利のことです。債権回収は、取引先(債務者)に対して売掛金の支払いなどをしてもらうための活動です。
ビジネスでは、基本的に信用できない相手とは取引をしません。しかし、取引開始時は問題ないと思えた相手でも、「新型コロナウイルス感染症の拡大から、業績が悪化した」といったように、途中で状況が大きく変化することもあります。

そこで重要になるのは、日ごろからの対策です。いざ「債権回収ができない!」と分かった段階で動き出しても、一部、あるいは全く債権回収できないということもあります。また、「取引先が倒産したので、弁護士に依頼して支払いを求める訴訟が必要」など、取引先の状況が悪化するにつれて、多くの時間と手間を掛けなければなりません。
以降では、早めに取引先の危険な兆候を察知し、売掛金などの債権回収に備えるための6つの対策をご紹介します。

与信管理をしっかり行う

1)与信管理の考え方

債権回収を確実にするための第一歩は与信管理です。取引を開始するときには、取引先の信用度に応じて与信限度額を設定します。
信用度を評価する方法は次の通りです。

  • 信用調査会社の調査リポート、3期分程度の決算書といった財務に関する情報を収集する
  • 商業登記簿で、商号・住所・代表者・事業内容などについて、変更の頻度や不自然な変更がないかを確認する
  • 不動産登記簿で、担保設定の有無やその金額、不動産売買の状況などを確認する
  • 上記の結果に加えて、営業担当者の報告や、経営者が取引先と面談などをした印象を加味して、総合的に判断する

2)与信限度額の考え方

与信限度額の基本的な考え方は、「必要かつ自社が安全な範囲内で定めること」です。必ずしも、与信限度額が小さければよいというものではなく、リスクの低い取引先であれば与信限度額を上げて、売上を増やすようにします。与信限度額の考え方の例は次の通りです。

与信限度額=月間売掛金発生額×売掛期間×信用度に応じた格付けウエート(取引先の安全性に応じて定めた係数)

格付けウエートは自社内で定めます。例えば、安全性の高い〜低い順にA〜Fで評価し、Aランクの格付けウエートは2.0、Fランクの格付けウエートは0.0などのように定めます。
月間売掛金発生額が同じでも、信用度が高い企業の与信限度額は月間売掛金発生額よりも多い額になります。一方、信用度が低い企業の与信限度額は月間売掛金発生額よりも少ない額になります。

例:月間売掛金発生額1000万円、売掛期間2カ月の場合

  • 甲社の与信限度額(格付けウエート2.0の取引先)
    4000万円=1000万円×2カ月×2.0
  • 乙社の与信限度額(格付けウエート0.5の取引先)
    1000万円=1000万円×2カ月×0.5

格付けは適宜見直し、信用度が高い企業は格付けを上げて取引を拡大、信用度が低い企業は格付けを下げて取引を縮小していきます。

3)危ない兆候を見逃さない

格付けの見直しにも共通することですが、継続的に取引先の状況を確認することが大切です。特に、取引先とじかに接する営業担当者や、お金の動きを把握している経理担当者は次の兆候に注意しましょう。

1.取引先社内の雰囲気の変化

  • 雰囲気が以前よりも暗く(悪く)なった
  • 社員の出入り(入退社)が激しくなった
  • 経営幹部が急に退社した
  • 人事異動が頻繁になった

2.取引関係の変化

  • 期限までに代金が支払われないことがあった
  • 支払いスケジュールや取引条件の変更の申し出を受けた

3.その他の変化

  • 取引先や取引金融機関が大幅に入れ替わった(入れ替わりが激しい)
  • 取引先や取引金融機関などとの間でトラブルを抱えている

また、信用調査会社によっては、取引先を登録しておくと、信用状況や経営内容に変化があった場合に自社に知らせてくれるサービスなども提供しています。自社でのチェックに加えて、こうしたサービスの利用も検討してもよいでしょう。

契約書に債権回収の可能性を高める条項を盛り込む

契約は口約束でも成立します。しかし、取引先、特に継続的な取引関係にある取引先とは、契約書を交わすようにしましょう。契約書には、「契約解除に関する条項」と「期限の利益の喪失に関する条項」を盛り込むと、万が一のときの債権回収の可能性を高めることができます。

1)契約解除に関する条項

契約解除に関する条項は、「特定の事由に該当した場合には契約を解除できる」とする条項です。この条項を盛り込んでおくと、取引先に納入済みの商品があれば、その返還を求めることができます。
なお、一般的には、次のような内容を解除事由とすることが多いようです。

  • 監督官庁による営業許可取消し、停止その他行政処分があったとき
  • 手形または小切手が不渡りとなったとき
  • 破産手続、民事再生手続、会社更生手続の開始申立てがなされたとき
  • 清算手続に入ったときや解散を決議したとき
  • 重要な資産について差押え、仮差押えまたは競売の申立てがなされたとき
  • 租税滞納処分を受けたとき

2)期限の利益の喪失に関する条項

期限の利益とは、簡単にいうと「返済期限が来るまでは、債務を返済しなくてもよい」というものです。平時には当たり前のことですが、手形が不渡りになるなど契約解除事由に該当する事態が起こった場合、一刻でも早く債権回収に取り掛かりたいと考えても、返済期限が来るまでは、それができないことになってしまいます。

期限の利益の喪失に関する条項は、解除事由等の一定の事由が発生したときに取引先が期限の利益を喪失するという条項です。この条項があれば、債務の履行期限を待つことなく債務の一括弁済を受けることができます。

担保を確保する

仮に返済が困難になった場合のリスクを回避する方法として、担保を確保しておくことを検討します。担保には、人的担保と物的担保の2種類があります。

1)人的担保

人的担保とは、いわゆる保証人を立てる(保証契約を締結する)ことです。
保証契約には、単なる保証契約(普通保証契約)と連帯保証契約があります。中小企業の場合、経営者個人を連帯保証人とする方法が取られることがあります。これは、取引先が支払いできなくなった際、連帯保証人である経営者個人に対して制限なく弁済を求めることができるからです。簡単に言うと、連帯保証人は、債権者と同じ程度の責任や義務を負っていることになります。
一方、普通保証契約では、保証人に次の2つの権利が認められており、連帯保証とは異なり、弁済を求めるハードルが高くなります。

  • 催告の抗弁権:債権者から債務の履行を求められたときに、まずは主たる債務者に催告するよう求めて、一時的に債務の履行を拒絶できる権利

  • 検索の抗弁権:保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明した場合には、債権者は、まずは主たる債務者の財産に対して執行をしなければならず、保証人は、一時的に保証債務の履行を拒むことができる権利

なお、経営者個人を連帯保証人とする場合、注意点があります。2020年4月施行の改正民法(債権法)で、個人が行う根保証契約について、極度額を付すことが義務付けられました。改正後に締結した契約では、「極度額の定めがなければ、根保証契約は無効」になるので、契約書などを確認しておきましょう。

2)物的担保とは

物的担保とは、債務者または第三者の特定の財産から優先して、強制的に弁済を受けることができる法的仕組みのことです。物的担保の対象となる代表的な財産は不動産です(抵当権の設定)。不動産は安定性があり、登記制度による対抗力もあるので担保に適しています。ただし、他に優先順位の高い抵当権者がいる場合には、当該不動産から債権を回収できないこともあります。

売掛金を約束手形で回収する

売掛金の回収を現金ではなく約束手形で行うのも一案です。手形の不渡りを出すと、会社は信用を大きく損なってしまいます。そのため、「不渡りを出すことはできない」ということがプレッシャーとなり、確実な支払いを促す効果が期待できます。

また、経営不安になると不渡りを避けるために、手形取引から現金取引への変更を申し出てくるなど、何らかのアクションを起こすことが多いため、経営不安のシグナルを比較的早い段階で察知する上でも有効です。

なお、手形を利用する際には、回収・保管・取り立て・領収書発行などの事務効率化や、紛失・盗難などの手形事故のリスク解消に効果がある電子記録債権(通称「でんさい」)の利用を、併せて検討してもよいでしょう。

ファクタリング(売掛債権支払保証)を利用する

売掛金の保全策として、ファクタリングを利用する方法もあります。ファクタリングとは、ファクタリング会社に対して手数料を支払う他、債権(売掛金や受取手形)を割り引いて売却するものです。債権回収はファクタリング会社が行い、万が一、債権回収ができなくなっても、そのリスクはファクタリング会社が負います。

ファクタリングを利用するには、手数料などの一定のコストが掛かりますが、電子記録債権と同様、手形に関する事務の効率化や、手形事故のリスクの解消を図ることができるので、総合的な観点から検討してみてもよいでしょう。

経営セーフティ共済・取引先信用保険へ加入する

いくら注意をしていても、債権回収ができなくなるというリスクをゼロにすることはできません。そうしたときの備えとして、中小企業基盤整備機構が提供する経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)があります。
経営セーフティ共済は、一定の掛け金を支払うことで、取引先が倒産して債権回収が困難となった場合に、事業資金を貸し付ける制度です。掛け金を支払う必要がありますが、債権回収が不能になった場合の連鎖倒産防止などへの効果が期待できます。

■経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)■
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/

以上
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年6月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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