役員を守る「D&O保険(会社役員賠償責任保険)」について解説

リスクにそなえたい 2021年7月15日

会社役員賠償責任保険(D&O保険)とは

会社役員賠償責任保険(Directors and Officers Liability Insurance、以下「D&O保険」)とは、役員が賠償責任を追及されたときに、損害賠償金や訴訟費用(弁護士費用)などの費用を填補する保険です。一般的に、D&O保険には次のようなメリットがあります。

  • 敗訴した場合でも、損害賠償金や訴訟費用が支払われる
  • 役員個人の財産を守ることができる
  • 日本国内だけでなく、国外でも補償対象となる

高額な損害賠償金が求められる事例があることや、国外でも広くビジネス展開していることもあり、多くの上場企業などがD&O保険に加入しています。また、非上場の中小企業でも、役員の過度なリスク負担を軽くして、積極的な職務の遂行を促す、優秀な人材(役員)の確保につながるなどのメリットが期待できます。

この記事では、D&O保険の対象となる役員(被保険者)などに加えて、

2021年3月に改正された会社法のD&O保険に関する規定の新設や、税務上の取り扱い

なども簡単にまとめています。なお、被保険者の対象などの補償内容に関わる部分は、一般的な内容を紹介しています。各商品によって補償内容は異なるので、ご留意ください。

D&O保険の仕組みや対象となる役員

1)D&O保険の仕組み

D&O保険の仕組みは次の通りです。D&O保険の対象となる役員損失の原因の範囲は幅広く、不正会計、製品事故、労使トラブルなどさまざまな事例が該当します。

2)対象となる役員

D&O保険の契約者は会社、被保険者は会社や役員となります。一般的に被保険者の対象は次のようになります。会社法上の取締役だけでなく、執行役員なども含まれます。

  • 会社およびその子会社
  • 会社法上の取締役、執行役、監査役、会計参与
  • 執行役員
  • 管理職従業員
  • 社外役員

2021年3月に改正された会社法とD&O保険

2021年3月1日に改正された会社法で、D&O保険に関する規定が新設されました。会社法上では「役員等賠償責任保険」と記載されています。
改正前は、会社が負担することができる費用や損害の範囲・手続きなどが明らかにされておらず、個別の解釈に委ねられていましたが、改正された会社法によりD&O保険に関する規定が明確になりました。会社法の改正ポイントをまとめると次のようになります。

  • D&O保険の基本的な内容を「株主総会の普通決議」または「取締役会設置会社では取締役会で決議」する
  • 決議する内容とは、「保険会社、被保険者、保険料、保険期間、保険金の支払事由および支払限度額、保険金により填補される損害の範囲、保険会社の主な免責事由、主な特約条項など」と解されている
  • 役員等賠償責任保険の更新時は、同様の決議が必要と解されている

対象は2021年3月1日以降に締結の新規契約だけでありません。既契約分の更新や更改(こうかい)などについても改正にそった手続きなどが必要になるのでご注意ください。

D&O保険の保険料に関する税務上の取り扱い

税務上、D&O保険の保険料は、次のような取り扱いになります。

  1. 「基本契約の保険料」は給与課税とはならない
  2. 「株主代表訴訟敗訴時担保特約」の保険料は給与課税となる

「基本契約の保険料」とは、役員が第三者(取引先・株主など)に損害を与えた場合に損害賠償を求める訴えを提起するものに対する保険料と考えられます。
「株主代表訴訟敗訴時担保特約」とは、株主が会社に代わって会社役員に対して損害賠償を求める訴えを提起するものに対する保険料と考えられます。

「株主代表訴訟敗訴時担保特約」についても、会社が利益相反の問題を解消するために、次の手続きを行えば給与課税を行う必要はありません。

  • 株主総会での普通決議または取締役会での決議を行うこと
  • 社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意または社外取締役全員の同意を取得すること

具体的な補償内容は契約によっても異なるので、税務上の取り扱いは専門家に相談するなどして慎重に判断してください。

以上
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉、税理士 森浩之)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年7月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

関連記事