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中小企業の健康経営の課題は「認知度と取り組み率の低さ」にあり

リスクにそなえたい 2021年11月4日

従業員の健康管理を経営戦略として実施する「健康経営」。「言葉は聞いたことがあるけれども、大企業がやっていることなのでは?」「人が少なくて、そこまでやる余裕がない」と考えられている中小企業の経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、「健康経営」に取り組むことで、業績向上や人材確保、またサプライチェーン上での取引継続につながることが、各種調査で明らかになっています。

この記事では、各種調査や公的なアンケートから、中小企業が健康経営に取り組む上での課題を紹介するとともに、健康経営を実施するとどのような効果があるのかを解説します。

健康経営とは

経済産業省によると、

健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること

と定義されています。

健康経営は政府の日本再興戦略、未来投資戦略に位置付けられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの1つですが、国家戦略として重視されている主な理由として、少子高齢化による生産人口の減少が挙げられます。

日本の生産年齢人口(15~64歳)は、1995年の約8700万人をピークに減少に転じており、2015年には約7700万人までになっています。2060年には約4800万人と、2015年の約6割の水準まで減少すると推計されています。

特に、新型コロナウイルス感染症拡大によってテレワークを導入した企業では、従業員の健康管理がますます重要な課題になっています。テレワーク下で、肩凝りや腰痛、精神的なストレスを感じるケースがあり、問題視されています。

今在籍している従業員が、長く生き生きと働くことができる環境を整えることは、生産年齢人口が減少する外部環境への対応策の1つであるとともに、新型コロナウイルス感染症拡大による急激な労働環境の変化も加わり、今後ますます注目されるトピックといえるでしょう。

中小企業における健康経営推進の課題

しかし、中小企業においては、健康経営の認知度や、その取り組みの周知が進んでいるとはいえないようです。
経済産業省は、2017年に国内の中小企業1万2000社程度(注)に対して、健康経営の認知度・実施状況のアンケート調査を実施しています。結果を見ると、

  • 聞いたことはあるが内容は知らない 32%
  • 全く知らなかった 52%

となっており、健康経営の具体的なことまで把握していない企業は8割以上にも及んでいます。

(注)有効回答数は3476社(29%)

また、2018年に東京商工会議所が実施した「健康経営に関する実態調査 調査結果」では、健康経営を実践するに当たっての課題として、

  • どのようなことをしたらよいか分からない(指標がない) 45.5%
  • ノウハウがない 36.6%

となっており、健康経営実践におけるノウハウや情報が不足しているという回答が上位を占めています。

また、上位3番目の回答として、

  • 社内の人員がいない 26.0%

という声もあります。従業員数が少ない中小企業では、人事総務業務を少人数で担っていることが多く、健康経営を実践しようにも、人員を新たに割くことが難しいという側面が、この結果から読み取れます。

経営者が健康経営に期待する効果

では、「健康経営を実践したい」と考えている中小企業の経営者は、健康経営にどのような効果を期待しているのでしょうか。

前述した東京商工会議所「健康経営に関する実態調査 調査結果」では、健康経営に望む直接的な効果として、

  • 生産性の向上 49.7%
  • 業績の向上 45.5%

などが期待されています。経営戦略として健康経営に取り組むのであれば、売り上げや利益の向上を目指すことは、経営者が最も期待するところといえるでしょう。

また、間接的な効果としては、

  • 従業員満足度の向上 58.6%
  • 健康意識の高まり 54.1%
  • 社内コミュニケーションの活性化 29.1%
  • 企業ブランドイメージの向上 14.4%

なども期待されています。

健康経営は、企業価値の向上や人材確保に寄与する

健康経営の直接的な効果として「業績の向上」が期待されていますが、健康経営を実践した企業は、本当に業績向上を実現しているのでしょうか。

経済産業省は、健康経営の取り組み状況と経年での変化を分析する「健康経営度調査」を実施しており、2018年度調査では、健康経営と企業業績との関係を調査しています。

健康経営を開始した年を「0」とした際の、5年前から5年後までの売上高営業利益率の業種相対スコア(業種内において健康経営を推進した企業の利益率が相対的に高いか低いかを把握する指数)の平均値を比較した結果、

  • 健康経営を開始した後の5年間では、業種相対スコアは正の値を示す傾向にあった

と結論付けられており、売上高営業利益率が業種相対で向上していることが分かっています。

また、健康経営は人材確保にも効果があるという調査結果があります。

同じく2018年度「健康経営度調査」によると、

  • 健康経営度の高い企業のほうが、離職率は低い傾向である

という結果が出ています。

離職率の全国平均が11.3%であるところ、調査に回答した企業の平均は5.3%、「健康経営銘柄(注)2020」に選定された企業では2.7%となっていました。

(注)健康経営銘柄とは、東京証券取引所の上場会社の中から、「健康経営」に優れていると選定された企業

この調査結果からは、健康経営の取り組みを実施することで、離職率を抑えることにつながっていることが分かります。中小企業は求職者に社名が知られる機会が少ないことから、労働市場から新たに人材を採用することは簡単ではありません。あわせて、中小企業は少人数で業務に当たっている企業も多く、傷病などによる休職者や退職者が1人でも出れば、業務継続に支障を来すことにもなりかねません。

健康経営に取り組み、今いる従業員に長く働いてもらうことが、中小企業の業務継続と持続的な成長につながるのです。

健康経営は「大企業だけ」の取り組みではない ~サプライチェーン上の生き残りに必須

健康経営は大企業だけの取り組みではなく、中小企業にとっても、サプライチェーンの観点から看過できない取り組みといえます。

「健康経営度調査」で、取引先の考慮に関する次の質問、

製品・サービスの購入や業務を発注する際に、取引先の健康経営の取組状況や労働衛生、従業員の健康の状況についてどのような内容を把握・考慮して発注を決めていますか

に対する回答として、2014年度と2020年度を比較すると、次のような結果になっています。

  • 特に把握・考慮していない 66.5%→29.1%
  • 健康経営施策の実施状況 5.1%→32.7%

この結果から、取引先への発注の際に、健康経営の実施状況や、健康経営優良法人の認定取得状況を考慮する企業が増加していることが分かります。
また、2017年度から選択肢に追加された次の項目についても、2017年度と2020年度を比較すると、次のような結果になっています。

  • 健康経営の表彰制度の取得状況 10.5%→39.8%

健康経営の取り組みをしていない、表彰制度を取得していないことで、それまで発注を受けていた企業の選定条件から外れ、取引が継続できない事態が発生する可能性もあるかもしれません。
サプライチェーン上の優位性を高め、取引を継続するためにも、中小企業こそ健康経営を経営戦略として取り組む必要があるでしょう。

課題はあるものの、経営戦略として取り組めばリターンも大きい

健康経営に取り組むに当たっては、ノウハウや人員確保といった課題があるものの、業績向上や離職率の抑制につながることが、これまでの調査結果から分かっています。

また、中小企業にとっては、サプライチェーン上で生き残るためにも、健康経営は経営戦略の重要課題として、避けて通れないものになるでしょう。持続可能な開発目標(SDGs)でも、ゴール8「働きがいも経済成長も」が定められており、従業員の働きがいを促進する健康経営の取り組みは、SDGsの観点に沿ったものであるといえます。

しかし、企業によって健康経営に対して抱えている課題もそれぞれであるため、他社が行っている取り組みをそのまま自社に取り入れるだけでは、真の課題解決にはつながりません。まず、自社の従業員の労働環境にどのような課題があるのか、従業員は生き生きと働くことができているのか、社内の現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。

具体的に、健康経営にどう取り組んでいけばよいのか、次の記事で分かりやすく紹介しています。

■「健康経営」を中小企業の経営者目線で考えてみる■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/growth/bp300067/

■中小企業の健康経営 実践に向けた4つのステップとは?■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300043/

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年9月6日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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