守るか、変えるか?競争のルールとの付き合い方

競争力のある会社にしたい 2016年3月9日

「異種格闘技戦」にチャレンジ!

「異種格闘技戦」というのを知っていますか。「『ボクシング』対『空手』」「『レスリング』対『キックボクシング』」など、異なる格闘技の一流選手が対戦する試合を異種格闘技戦といいます。

ある日、一流のボクシング選手であるあなたのもとに、レスリング選手から試合の申し込みがあり、異種格闘技戦をすることになりました。一世一代の大勝負、絶対に勝ちたいところです。さて、勝つための準備として、あなたなら何をしなければならないと考えますか。

勝つための秘策とは?

「レスリング(対戦相手の競技)の練習を積む」といったことを検討するかもしれません。しかし、相手は百錬練磨の選手です。そうした付け焼刃的な対策だけでは勝つことは難しいでしょう。

それよりも、勝つ可能性を飛躍的に高める方法がひとつあります。それは「自分にとって有利なルールで戦う」ことです。例えば、「自分の得意競技であるボクシングのルールで試合をする」「対戦相手の得意技であるレスリングのタックルを禁止する」といったことです。こうした自分の長所を生かせるルール、相手の長所を打ち消せるルールで戦えば、あなたが勝負に勝つ可能性はグッと高まります。

企業戦略からみた「ルール」

こうした「自分に有利なルールで戦う」、あるいは「そのために既存のルールを変更する」ということは、経営陣などが会社の戦略を検討する際にも大切な考え方です。

例えば、業界のトップ企業などの大企業が「低価格で高品質の製品を提供する」といったように「価格」と「品質」を重視して事業を展開しているとします。この市場で、相対的に経営資源に劣る中小企業が、「価格」と「品質」を「勝敗を決するルール」と考え、大企業と同じルールで競争しても勝つことは困難です。

しかし、顧客が価値を認めるもので、大企業と異なる要因、例えば、受注から納品までの「スピード」で勝負を挑む、すなわちルールを変えることができたらどうでしょうか。「価格」と「品質」には高い能力を持つ大企業でも、これまで重視してこなかった「スピード」に関する能力は、それほど高くなく、中小企業の方が優れているかもしれません。そうすると「価格」と「品質」だけで勝負するよりも、大企業に勝てる可能性は高まります。

このようにルールをどう認識し、設定するかというのは「小が大に勝つ」ためには大切なポイントとなるのです。

ルールを考える際のポイント

ルールを考える際には、単に「自社にとって有利なルール」というだけでは不十分です。中小企業が「スピード」という異なるルールで勝負しても、すぐに大企業に模倣されるのであれば意味がありません。従って、ルールは「相手がすぐに追随できないルール」であることがポイントとなるのです。少し古い話ですが、インターネットの利用が一般化した頃の状況を思い出すと分かりやすいかもしれません。当時は、多くの分野で、インターネット通販市場を巡って、実店舗を展開する既存の大企業と新興企業との間で競争が起こりましたが、結果的には新興企業が優位に立ったケースが少なくありませんでした。

これは、同じ商品を販売しても、両者のビジネスモデルが大きく異なっていたこと、大企業からみると従来とは異なるルールでの競争を強いられる分野であったことに原因があります。例えば、リアルな世界では店舗数・規模などが勝つための重要なルールでしたが、インターネットの世界では、ウェブサイトの閲覧・検索の容易さ、受注から配送までのスピードなど異なる要因が重要なルールとなりました。

そのため、インターネット通販での成功には、ウェブサイトやフルフィルメント(受発注、配送、請求、苦情処理など裏側の業務全般)の構築・運営などの能力が必要でしたが、大企業の中にはこうした能力が不十分なところもありました。加えて、実店舗の売上との“共食い”への懸念などもあり、結果として新興企業をすぐに追随することができませんでした。この差が、勝敗を分けた大きな要因となったのです。

簡単な活用例を考えてみる

ルールという考え方は、身近なところでも活用できます。簡単な営業の場面を例に考えてみます。オフィス機器を販売しているA社とB社は、「サービスのA社」に対し、「価格のB社」と評されるライバル企業です。両社はZ社にコピー機導入の提案をしています。Z社は、性能と価格を重視していることから、現在のルールは「性能」と「価格」といえるでしょう。

両社の提案内容を比較すると、性能はほとんど差がないものの、価格はB社の方が安く、B社が優位な状況です。こうした状況でA社は、B社に価格で対抗することもできますが、ルールをB社に有利な価格から、A社が得意なサービスに変更することも検討できます。その際には「B社が追随できないルール」を検討すると同時に、Z社にその重要性を伝え、ルールを価格からサービスに変えるよう働きかける必要があります。

例えば、遠方にあり、きめ細かな訪問が難しいB社に対して「故障時には、即日修理に伺います」といったきめ細かなサービスを提案し、ルールの変更を促すことができれば、A社はB社との競争を優位に進めることができるようになります。

自社に有利なように競争のルールを変更した例

表現を変えると「自社の強みで勝負する」という当然のことに思えるかもしれません。しかし、実際には相手の得意なルールで戦っていたり、自社の強みは考えても、他社が追随できるか否かということには注意していなかったりということは少なくないので、こうした視点を常に意識しておくとよいでしょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年2月29日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者 日本情報マート

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