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具体的だからこそ惑わせる数字の落とし穴に気をつけろ!

競争力のある会社にしたい 2016年3月11日

「当社比30%アップ!」の謎

テレビなどの広告を通じて、自社の従来の製品と新製品を比較した広告を目にした経験のある人は多いのではないでしょうか。例えば、「処理スピードが30%アップ(当社比)」「洗浄力が10%アップ(当社比)」など数字が強調された広告です。

こうした広告を目にすると、なんとなく「処理スピードが30%もアップしたんだ。今度の新製品はすごい性能なんだな」という気持ちになってしまうものです。

でも、ちょっと待ってください。これは本当に“すごい新製品”なのでしょうか。

数字のトリック?

ビジネスでは、できるだけ正確かつ具体的に物事を伝えたり、把握する必要があります。そのための最も基本的な方法は数字を使うことといえるでしょう。

ただし、単に数字を使えばよいということではありません。数字の見方や使い方を理解し、注意を払わなければ、数字に惑わされることになりかねません。

さて、冒頭の例ですが、結論からいうと「処理スピードが30%アップ(当社比)」だけでは、本当に“すごい新製品”かは判断できないと考えなければなりません。

問題点の一つは、「30%アップ」の根拠となっている従来の製品の性能が分からないということです。

例えば、従来の製品の処理スピードが、「毎分10個」か「毎分1個」によって、30%アップの意味合いは全く異なります。毎分10個から30%アップした場合は3個増加して「13個」となりますが、毎分1個からでは増加するのは0.3個で「毎分1.3個」にしかなりません。

もう一つの問題点は、他社製品や業界水準の処理スピードが分からないということです。例えば、業界の最高水準が毎分10個の場合、新製品が30%アップして毎分13個になったとしたら、それは“すごい新製品”と評価できるでしょう。しかし、毎分1個から30%アップして毎分1.3個になっただけだとしたら、そうした評価にはならないかもしれません。

もちろん、実際の広告では、こうした消費者の誤解を招きかねないような数字の使い方をしていることはありません。しかし、注意深く広告の内容を確認しなければ「30%アップはどの程度すごいのか」ということは正確に分からないのは事実です。

ビジネスにおいて、数字は物事を把握するためには大切なものです。しかし、このように、ただ目の前にある数字をみているだけでは、数字の本当の意味を理解できないことや、時には事実を誤って理解してしまうこともあるのです。こうした、いわば“数字のトリック”の代表的な2つの例を紹介します。

例1:伸び悩む高成長率企業

近年、閉塞感のある国内市場を飛び出して、新興国など成長著しい海外市場に進出する企業も多くなりました。こうした企業に関する報道などをみると「○○国の市場で対前年比売上高30%増」といったように、国内市場ではなかなか達成できない好調な業績を示す数字が報じられています。

しかし、それがその会社にとって望ましい結果かどうかは、これだけでは判断できません。例えば、「対前年比売上高30%増」と報じられた企業が進出した国の国内市場の成長率が、対前年比50%増であったらどうでしょうか。50%も成長した市場で、30%の成長しか達成できなかった企業は、何らかの課題があるはずであり、手放しで30%の売上高増を喜ぶことはできないでしょう。

例2:“平均”を表さない平均値

「月間平均売上高」といったように、平均値は、目にする機会の多い数字の一つです。しかし、ここにも注意すべき点があります。

例えば、支店別の営業担当者1人当たりの月間平均売上高という資料があったとします。その資料をみると、10名の営業担当者が所属する支店の営業担当者1人当たりの月間平均売上高は40万円となっています。

「営業担当者1人当たりの月間平均売上高は40万円」と聞くと、その支店の営業担当者の平均像として「月間40万円ちょうどを売り上げる営業担当者」の姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際には、図表1のような、IとJのふたりで売り上げの半分近くを占める典型的な「2:8の法則」が成り立っている支店かもしれません。

営業担当者別月間売上高(単位:万円)

そうすると、思い描いた「月間40万円ちょうどを売り上げる営業担当者」は、実はその支店には誰一人いないことになります。例えば、営業支援策など、この支店向けの施策を検討するときに「月間40万円ちょうどを売り上げる営業担当者」を想定して検討しても、実態には即したものとはならない可能性が高いでしょう。

数字と上手に付き合うために

惑わされることなく、数字と上手に付き合うために大切なことは「一つの数字だけで実態を正確に知ることはできない」という認識を持つことです。言い方を換えると、数字の本当の意味を把握するには、関連する数字と比較したり、定性的な情報を交えて検討したりする必要があるということです。

例えば、比率は実数とセットで確認することが基本です。また、時系列で集計している数字は、ある程度、過去に遡って確認し、トレンドを把握することも大切です。加えて、業界全体の数字と比較するなど社外の数字に目を向けることも必要でしょう。

基本的なことのようですが、こうして数字で表されている事実をさまざまな角度から比較・検討することで数字の本当の意味を理解することができるのです。

また、本稿では、数字を「読む」といった受動的な視点から話を進めてきましたが、逆に「数字を使った資料を作成する」といったように、自らが数字を示す側になることもあります。その際には、読み手がさまざまな角度から比較・検討することができ、数字の本当の意味を理解できるように工夫することも大切です。

ビジネスにおいて数字は欠かすことのできないものですから、数字と上手に付き合う方法をしっかりと身につけましょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年2月29日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者 日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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