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その料理はまずくない!脱「自分本位」の正しい気遣い

競争力のある会社にしたい 2016年3月21日

相手に配慮したつもりだけど…

営業部に所属する中堅社員のAさんは、取引先が主催する食事会にゲストとして参加しました。Aさんの会社とその取引先は新しいビジネスを立ち上げたため、取引先がお祝いの食事会を企画してくれたのです。

お酒も進み、Aさんは食事会を楽しんでいますが、料理にはほとんど手を付けていません。その日の料理にはAさんの苦手な食材が多く使われており、味付けも口に合わなかったからです。

ゲストが料理に手を付けていないのをみて心配になった取引先が、「お口に合いませんか?」と尋ねてきました。Aさんは、料理が口に合わないことをはっきり伝えるのは取引先に対して失礼だと考え、「いや、そんなことはないですよ…」と、その場を取り繕いました。しかし、その後もAさんは、料理にほとんど手を付けませんでした。そんなAさんをみた取引先の面々は何となく気分がそがれてしまい、料理を食べにくい雰囲気が生まれてしまったのです。

主張してもよい場合とそうでない場合

「料理がおいしい、または口に合わない」「価格が高い、または安い」「映画に感動した、または特に感じることはない」といった好みは人それぞれ異なります。また、それをどのように主張するかは、各人の自由でもあります。

しかし、「料理がおいしい!」などプラスの好みを伝える場合は問題ありませんが、マイナスの場合は注意が必要です。

例えば、「料理が口に合わないときは、そのことをはっきりと伝えたほうが、相手のためになる」という人がいます。この場合の相手とは、プロの料理人を指しているのでしょう。確かに、ビジネスとして料理を提供しているプロの料理人の立場であれば、味付けなどに対するお客様の忌憚のない意見はとても貴重でしょう。

一方、冒頭の食事会の例ではどうでしょうか。大切なゲストのために一生懸命にお店を選んでくれた取引先に対して、料理やお店の「ダメ出し」をすることは、その後の取引先との関係性を考えてもよいことだとはいえません。

自分基準であることを認識する

加えて、そもそも料理がおいしい、口に合わないといった好みは、個人差が大きいものです。つまり、その人の味覚に合わないだけのことであって、ほかの人にとっては、おいしい料理である場合もあります。

にもかかわらず、食事会などの場で口に合わないことを言葉や態度ではっきり示してしまうと、一緒に食事をしている人に不快感を与えます。「私はおいしいと思っているのに、横でまずそうな顔をされるのは不愉快だ!」といった具合です。

気遣いは「言葉」と「行動」で示す

冒頭のAさんは、料理が口に合わないことをストレートに表現することを避けました。しかし、結果として食事会の場は気まずいものになってしまいました。これは、正しい気遣いができなかったからです。

コミュニケーションには、言語(言葉)と非言語(身振り、話し方、見た目など)のものがあります。どちらも重要ですが、守らなければならないポイントは、言語と非言語のコミュニケーションの内容を一致させることです。Aさんは、言葉では料理が口に合わないことを否定しましたが、その後も料理に手を付けず、行動が伴わなかったために取引先に違和感を与えてしまいました。Aさんは、相手を気遣ったつもりでしたが、コミュニケーションの内容が一致していなかったのです。

この場合、Aさんの対応としては以下の二通りが考えられるでしょう。

    • 料理がおいしいと伝え、少しずつでも笑顔で料理を食べる
    • 料理はおいしいのだけど、実はお腹の調子が悪くてあまり食べられないと方便を使う

どうしても食材や味付けが苦手で料理が食べられないのであれば、方便を使ってでも食べなくても済む状況を作り出さなければならないのです。

自分本位になっていないか

ただし、「お腹の調子が悪い」などの方便を使った場合、結局は料理を食べないことになるため、それが相手に対して申し訳ないという感情につながります。この感情が大きくなると、都合のよい言葉ばかりが口をついて出てしまうわけですが、これでは言語と非言語のコミュニケーションの内容が一致しなくなってしまい、方便を使う意味がなくなってしまいます。

これと似たケースが、相手に「来週、飲みに行きましょう」などと誘われたときに、行くつもりがないのにはっきりと断らず、返事を保留する場合です。こうした人は、「断りたいけれど、断ったら相手に失礼になる」などと考えているかもしれませんが、実際は、返事を保留した結果、相手のスケジュールを仮押さえすることになるほうがよほど失礼です。

こうならないためにも、断るときははっきりと断ったほうがよいのですが、断り方には注意が必要です。「来週は出張続きで時間が取れない」「医者からお酒を止められている」など、自分の力ではどうにもできない理由(方便)を、できるだけ具体的に伝えれば、相手は納得してくれるものです。

本質を理解すれば怖くない

ときとしてはっきりと意思表示をすることが正しい心遣いにつながります。しかし、私たち日本人は、白黒はっきりさせることが苦手だといわれます。特に何かを断る場合、相手から嫌われてしまうのではないかと考え、はっきりしない返答をしてしまいがちです。

このようなときは、物事の「根本的な目的」を確認してみましょう。例えば、冒頭の食事会の場合、取引先の根本的な目的は「Aさんとコミュニケーションを深めること」であったはずです。それを円滑に進めるために、食事会を企画してくれたのでしょう。つまり、コミュニケーションを深めることができるのであれば、食事会は絶対に必要なものではなかったのです。であるならば、料理について下手に取り繕う必要はなく、堂々と方便を使えばよかったことが分かります。

気遣いをしているつもりでも、実は自分本位に行動しているケースがあります。物事の根本的な目的を理解し、伝え方を間違えず、言語と非言語のコミュニケ―ションを一致させることが、正しい気遣いの第一歩です。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年3月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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