環境変化に対応するマーケティングの実践

競争力のある会社にしたい 2016年3月19日

商品ライフサイクルの考え方

1)プロダクト・ライフ・サイクルとは

人間はもちろんのこと、どんな生き物にも誕生から死までの寿命があるように、一世を風靡(ふうび)した人気商品にも「寿命」があります。このように、商品が市場に投入されてから姿を消すまでの流れを、「プロダクト・ライフ・サイクル」といいます。

プロダクト・ライフ・サイクルは一般的に4つのステップで示され、それぞれに応じた課題とその解決のためのマーケティング戦略があります。プロダクト・ライフ・サイクルのイメージは次の通りです。

プロダクト・ライフ・サイクルのイメージ

2)ライフサイクルに応じたマーケティング戦略

「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の各ステップにより企業の取るべきマーケティング戦略は異なります。例えば、導入期には商品ラインアップを多数そろえるよりも、機能向上と価格の低減に努めるほうがよいケースも多いでしょう。また、成長期に安心して購入できることを示すために、アフターサービスの充実などをPRするのが有効なケースもあるでしょう。成熟期から衰退期にかけては、顧客の商品に対するニーズが明確化され、商品の差異化などが求められるケースも多くなるでしょう。

商品のマーケティングを考える上で、商品ライフサイクルの考え方は多くの示唆を与えてくれます。

商品群の組み合わせをPPMで考える

先に示した「商品の寿命」にも関連するマーケティングの有名な理論が、PPM(Product Portfolio Management)です。本来は売り上げやシェアの変化といった市場ポジショニングに合わせて、経営資源をどう振り分ければよいかを4象限で示した概念で、それぞれに独特なキーワードを配しているのが特徴です。PPMの概念は次の通りです。

PPMの概念

PPMでは「市場の成長率」と「相対的シェア」を基に、商品を次の通り分類します。「問題児」「花形」「金のなる木」「負け犬」の4つのパターンは、商品の“誕生”から“死滅”へのプロセスに通じるという分析もなされます。つまり、最初は問題児として登場した商品が、やがて花形・金のなる木を経て、最後は負け犬となって消えていくという流れです。しかし、そうした流れを黙って受け入れるだけでは“企業や商品のブランド化”は難しいでしょう。

そこで求められるのが「革新」と「再生」です。つまり、時代の経過で「負け犬」になりかけた企業や商品へのテコ入れやリニューアルを通じ、再び世に送り出す手法です。

4つのフレームでマーケティングを検討する「4P」

今後のマーケティングの方向性を検討する上で便利なフレームとして、「4P」という考え方があります。これはマーケティング上必要とされる要素を、「製品・サービス」「価格」「チャネル」「プロモーション」という4つに分類して検討していくという方法です。4Pという考え方は、製品・サービスを起点にしてマーケティング活動を捉えるため、主に自社の製品・サービスを提供する業態である製造業やサービス業に適しています。一方、自社に固有の製品・サービスを持たない小売り・卸売りなどの流通業、物流業などの場合には4Pに対比する考え方として「4C」というフレームが適しています。

1)製品・サービス(Product)

顧客(あるいは見込み客)が提供してもらいたいと考えている価値(つまりニーズ)に対して、自社は今後どのような製品・サービスを通じて応えていくのかを考えます。次のような点を検討していくことで、強い製品・サービスを生み出す自社の仕組みを考えていきます。

  • 競合他社の提供するものと比較してどのような差異化要素を持っているか?
  • その差異化を実現するために使うべき自社のノウハウや能力とは何なのか?
  • そしてそれはどの部門がどのように保有するべきものであるのか?

2)価格(Price)

自社が提供する製品・サービスの価値として、顧客はいくらぐらいまでなら支払ってもよいと考えているのかを検討します。これを知るためには当然、テスト販売やアンケート調査などを行う必要があります。場合によっては、自社の従来の価格設定の考え方も見直さなければならないかもしれません。

また、自社の現状でのコストを中心に考えていくと、顧客に対する新たな価値を提供できる機会を逃してしまうかもしれません。新たな価格を実現するために、仕入れ方針の変更や生産部門の一層の効率化などのコスト構造の見直しが必要となります。つまり、原価による値決めの考え方を捨て、顧客の視点での価格検討を行うということです。

3)チャネル(Place)

顧客に対してどのような流通経路を通じて、製品・サービスを提供していくのかを考えます。この際に重要なのは、自社から見て流通させやすいチャネルを選択するという考え方から、顧客が製品・サービスを入手しやすいチャネル、あるいは入手したいと考えるチャネルはどれかという考え方に変更する必要があるということです。

例えば、高価なブランド品のバッグを直営店で誰よりも早く確実に手に入れたいと考える顧客がいる一方で、少し時間がかかっても廉価な輸入店やリサイクルショップで手に入れようと考える顧客もいます。あるいは、産業用機器でもメーカーから直接購入したいと考える顧客がいれば、親しく取引している専門商社を通じて購入したいと考える顧客もいます。自社が対象とする顧客のプロフィールや購買基準に合致したチャネルはどれなのかを検討し、それに合わせて自社のチャネル政策を変更していくことが重要となります。

4)プロモーション(Promotion)

どんなに素晴らしい製品・サービスを提供しているとしても、その存在を知ってもらわなければ、顧客は購入を検討することさえできません。この点からプロモーションはマーケティング戦略上の非常に重要な要素となります。プロモーションはその性格から、広く一般に働き掛けるタイプと、個別のターゲット顧客に働き掛けるタイプに分けられます。前者の代表が広告・宣伝であり、後者の代表が人的販売です。

顧客の購買決定活動は、広く関連情報を集めようとする時期と、個別の製品の比較検討に入り購入を決定しようとする時期に大別されます。一般に関連情報を集めようとする時期には広告・宣伝やメディアでの報道などが効果的です。一方、いざ購入しようとするときには営業担当者の提案や、小売店での推奨といった人的販売などが効果的です。

つまり、製品・サービスがどの程度顧客に認知されているかによって、有効なプロモーションの方法は変わってくるということです。有効なプロモーションの方法を考えるためには、どのような計画で誰に対してプロモーションを行うべきなのか、現状のプロモーションの有効性はどうなのかなどを、今一度見直してみることが必要です。

4つの顧客視点で顧客の購買活動を理解する「4C」

自社に特有の製品・サービスを持たない小売り・卸売りなどの流通業や物流業においては、製品・サービスを起点に考える4Pではマーケティング戦略が立てにくいことがあります。そのため、小売り・卸売りなどの流通業や物流業では、顧客に選択されるためにはどのような観点が必要かを考えていくことがマーケティング上の課題となり、これを検討する上で「4C」というフレームが利用されることがあります。

これは、先の4Pと同様に、マーケティング上必要とされる要素を、「顧客価値」「顧客コスト」「利便性」「コミュニケーション」という4つに分類して検討していくという方法です。

1)顧客価値(Customer Value)

顧客は、製品・サービスの購買を決定する際には、「利便性が高まる」「快適な生活を送ることができる」といった視点から、それらを購買することによってどのような問題解決(ソリューション)が実現するか、という点を重視します。

そこで、「そもそも、顧客は自社にどのような価値を求めているのか」という点を検討する必要があります。取り扱い製品・サービスのラインアップに関する検討はもちろんですが、顧客が「購買活動」自体に持っている価値(小売店における買い物の楽しさ、卸売業における納期の確実性など)に対する理解も重要です。また、自社のブランド価値なども大きく関わってくる要素です。つまり、顧客が競合他社ではなく自社を選択している理由の根源を理解し、これを自社のアピールポイントとして前面に押し出していくようなマーケティング戦略を検討していくことが重要です。

2)顧客コスト(Customer Cost)

自社の製品・サービスと競合他社のものが類似している場合、顧客が購買に掛けるコストをどのように考えているかを理解することが重要です。ここでいう「コスト」とは、金銭的なコストのみを意味するものではありません。また、顧客が望んでいるのは「低コストであること」とも限りません。顧客が自社の取り扱い製品や提供サービスなどを購買する上で、金銭的コストをどこまで許容するか、時間的・距離的なコストをどう考えるかを調査・検討して明確に把握する必要があります。

その結果、顧客が許容するコストが低いのであれば、低コスト化を図らなければ顧客の支持は得られないでしょう。一方、顧客のコストに対する許容範囲が広いのであれば、なぜそのような判断を顧客が行っているかを分析し、自社の強みを明確化してマーケティング戦略を立案します。

このように、顧客コストは顧客価値とも密接に関わる要素であり、競合他社に対する自社の強みを検討する上でも重要なポイントとなります。

3)利便性(Convenience)

顧客に製品・サービスの購買を促すためには、いかに顧客にとって利便性の高いチャネルを構築するかという顧客の視点に立った考え方が重要となります。

店舗立地や店舗レイアウトなどのハード面での戦略、優良顧客に対する優先販売やポイント制導入などのソフト面での戦略、さらにはインターネットの利用による時間・距離の制約を受けない購買行動への誘導など、顧客の特徴に適合した利便性を提供することで競合他社との差異化を図っていきます。

4)コミュニケーション(Communication)

4Pにおけるプロモーションと4Cにおけるコミュニケーションとの違いは、プロモーションが情報発信側からの顧客への情報提供という性質が強いものであるのに対し、コミュニケーションは、顧客との双方向での情報のやりとりをするという点です。小売業や卸売業などにおいては、企業は顧客と直接接する時間が長くなります。自社の製品・サービスを持たないことがあるこれらの業種においては、マーケティング戦略の立案に当たって、常に顧客ニーズを吸い上げることで取り扱い製品のラインアップなどを最適なものにしていかなければなりません。つまり、情報提供を行いながら情報収集も同時に図っていかなければ、顧客ニーズに応えられなくなってしまうということです。

どのような情報を発信するかを検討するのは当然として、どのような仕組みで情報収集を行うかという組織的なコミュニケーション活動の検討と、顧客にじかに接する販売員などの担当者への教育・訓練などもマーケティング戦略の一環として重要です。

マーケティング目標の変化への対応

マーケティングとは「明日の糧」を得るための戦略的な活動です。つまり、企業の中長期の事業戦略に沿って計画・検討され、実施されていくものです。

マーケティング活動の最大の目的は、販売ではなく「顧客の創造と維持」です。営業部門の活動をこの目的のために整理すると、「新規開拓活動」「関係強化活動」「提案営業活動」「関係維持活動」の4段階に大別されます。

1)新規開拓活動

新規開拓活動でのマーケティング目標は、「いかに短期間で効率良く市場に浸透し、顧客を獲得するか」です。この目標を十分理解していないと、新規開拓活動の際にクロージングまでの商談に長い期間を要する製品を選択してしまう、あるいは個別のカスタマイズが必要となる商材を選んでしまい、結果として時間を浪費した上に、開拓成果が上がらないという状態になる危険性があります。

一般的に新規開拓の目標は顧客の量的拡大です。そして新規開拓活動での成約は、基本的には確率の問題になります。つまり、いかに多くの見込み客に、いかに効率的にアプローチするかが成否の分かれ目になります。

この点から、新規開拓活動においては、新製品、パッケージ化された提案・サービス、自社の標準品というような、セールス活動やセールストークが比較的マニュアル化しやすいものを使って行うとよいかもしれません。また、活動体制は営業管理者の指示の下、事前に準備した見込み客リストなどに基づき、日時・期間を定めて営業担当者全員で一斉にローラー作戦で行うのも一策かもしれません。

2)関係強化活動

新規開拓によって獲得した顧客との関係を強化し、継続的取引が実現できるようにする活動です。この段階では、顧客ごとの取引の量的拡大を目標とします。つまり、新製品や標準品などによる単品・単発商談が中心であったものを、大型商談・継続商談に変化させていくという取り組みです。

大型商談にしていくということは取引金額が大きくなることになり、継続商談にしていくということは顧客の業務プロセスや生活スタイルに自社の製品・サービスを不可欠なものとして組み込んでもらうということになります。これを実現するためには、個別の顧客に対しての詳細な情報と過去の取引履歴の分析などが不可欠になります。つまり、顧客のことをどの競合他社よりもよく知っていることが求められます。

また、関係強化活動の推進体制は、営業担当者単独から経営幹部(マネジャー、事業部長、役員・経営者)を巻き込んだ縦方向でのチーム体制となっていきます。これは、大型商談や継続商談においては、より高度な判断が求められることがあることから、顧客の自社内での位置付けを「営業担当者の顧客」から「企業の顧客」へと転換させる必要があるためです。

3)提案営業活動

提案営業、あるいはソリューション営業という言葉がよく使われます。その意味するところは、特定の顧客が抱える何らかの問題を解決する方策を、自社が中心となって提供するというものです。

つまり、自社の製品・サービスの顧客の業務プロセスや生活スタイルへの組み込みが完了した関係強化段階から、さらに一歩進んで顧客の特定の問題を専従的に解決する、あるいは共同で何らかの解決法を生み出していくということです。従って、この段階では、顧客ごとの取引の質的拡大がマーケティング目標になります。

この段階に入ると、案件は個別顧客ごとに異なり、営業部門が保有している標準的な製品・サービスだけでは解決できなくなります。このため、自社の開発部門や生産部門など他部門を巻き込んだ横の方向でのチーム体制が不可欠となります。営業部門の役割は全体のコーディネートが主体です。

多くの提案営業活動での案件は、1個のプロジェクトといえるものになります。このため営業部門においては、案件の成約のみを追求するのではなく、各案件の受注前並びに受注後の進捗管理と予算管理が重要な命題となってきます。

4)関係維持活動

ここまでの取り組みで構築してきた顧客との量・質両面での関係を、いかに効率的に継続するかということが活動の主体となる段階です。この段階で必要とされるのは、計画的かつ効率的に顧客との関係を維持していくために必要な仕組みです。

また、この段階において絶対に避けなければならないのが、せっかく企業全体の顧客として育て上げた顧客を、営業担当者各自の顧客に戻してしまうことです。営業部門では新規開拓から関係維持までの活動サイクルが常に回っています。このような状況下では、営業担当者個人に顧客の維持・管理を任せてしまうと、忙しくてコミュニケーションがおろそかになるなど、営業担当者の業務量の変化などによって顧客との関係が薄まる、あるいは完全に途絶えてしまうような事態が発生します。

こうした事態を避けるためには、まず、メンテナンスに関してはメンテナンス部門に、継続取引の業務処理に関してはバックオフィス部門に、というように自社の業務プロセスに組み込んでしまうことで、顧客との接点を多重化することが求められます。また、営業部門においても顧客との定期的な接触が絶えないようにし、リピートオーダーを確実に受注できるようにする必要があります。このためには、営業管理者が、部下である営業担当者の活動をしっかりと管理できる仕組みとして、営業日報の義務化、活動予定表の厳格化などを整えることが重要です。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年3月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

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