コロナ禍の健康診断 健康情報の取り扱いには細心の注意を!

旬な話題を知りたい 2021年5月18日

健康診断では、健康情報の取り扱いに要注意

コロナ禍の影響が続く中、多くの企業は、健康診断の実施について「受診時期を分散させる」「自宅近くの健康診断実施機関での受診を認める」などの工夫をしています。そして、従来とは異なる方法で健康診断を実施する場合、注意したいのが、「健康情報の取り扱い」です。ここでは健康診断を、

  • 法定の健康診断:労働安全衛生法で定められており、会社に実施義務がある
  • 二次健康診断:労働安全衛生法で定められているが、会社に実施義務はない
  • 法定外の健康診断:労働安全衛生法で定められていない

に分けて紹介していきます。

健康情報の取り扱いに関するルールは、個人情報保護法や労働安全衛生法など複数の法令で定められており、少し複雑です。詳細は後述しますが、経営者や労務担当者が押さえておきたいポイントは次の5つです。

  1. 法定の健康診断の結果は、社員本人の同意がなくても取得できる
  2. 法定外の健康診断の結果は、社員本人の同意がなければ取得できない
  3. 健康診断に関する情報は、一定の範囲内で第三者に提供できる
  4. 健康診断の結果は、一定期間(5年間など)の保存義務がある
  5. 健康情報の取り扱いについては、健康情報取扱規程で定めることが望ましい

では、個別に確認していきましょう。

法定の健康診断の結果は、社員本人の同意がなくても取得できる

社員の病歴、健康診断やストレスチェックの結果、医師等による面接指導や保健指導を受けた事実・内容などの健康情報は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」となります。要配慮個人情報とは、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取り扱いに特に配慮を要する個人情報です。具体的には、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などが該当します。

会社が要配慮個人情報を取得する際は、利用目的を特定し、あらかじめ社員本人の同意を得なければなりません。ただし、法令に基づいて取得する場合(一部例外あり)などは、社員本人の同意が不要なケースがあります。例えば、健康診断の結果があります。具体的には、法定の健康診断を実施し、その結果を健康診断実施機関から取得する場合、社員本人の同意は不要となります。

また、労働安全衛生法により、社員50人以上の会社には「ストレスチェック」の実施が義務付けられています。ストレスチェックについては、法定の健康診断と違い、会社がストレスチェックの実施者から結果の提供を受ける場合、社員本人の同意が必要です。

ストレスチェックにおける健康情報の取り扱いについては、以下の記事で詳細を紹介しています。

■コロナ禍で重要性が高まる? ストレスチェック制度の実務のポイント■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300002/

法定外の健康診断の結果は、社員本人の同意がなければ取得できない

「社員の健康のため!」ということで、健康診断の際に、法定外の健康診断として「がん検診、婦人科検診、胃部エックス線検査(バリウム検査)」などを実施する会社があります。コロナ禍においては、PCR検査や抗体検査を社員に受けさせたいという会社もあるかもしれません。

こうした法定外の健康診断を受けるか否かは社員の自由です。また、受けた場合でも、会社がその結果を健康診断実施機関から取得するためには、社員の同意が必要です。

健康診断の結果、二次健康診断(再検査・精密検査)が必要な社員が出てくることもあります。二次健康診断は労働安全衛生法で定められているものの、会社に実施義務はありません。また、実施するとしても、受けるか否かは社員の自由です。二次健康診断の考え方は法定外の健康診断と同じです。社員が健康診断を受けた場合でも、会社がその結果を健康診断実施機関から取得するためには、社員の同意が必要です。

法定外の健康診断については、事前に「健康診断実施機関から会社に健康診断の結果を通知すること」について、社員の同意を得た上で実施するとよいでしょう。健康診断実施機関が同意書を作成してくれる場合もあります。

健康診断に関する情報は、一定の範囲内で第三者に提供できる

法定の健康診断を実施した場合、会社はその結果を遅滞なく社員に通知します。また、異常の所見があった社員については、配置転換など就業上必要な措置について医師などの意見を聴きます。その際、医師などから過去の健康診断の結果などの情報を求められた場合は提供します。

この他に就業上の措置の実施に当たって健康診断に関する情報を提供できるのは、原則として、産業医、保健師、衛生管理者など、社員の健康管理業務に従事する者に限られます。もし、健康管理業務に従事しない上司などに情報を提供する場合は、情報を加工するなどして、就業上必要な措置を実施する上で必要最小限のものにとどめます。

以上の考え方は、法定外の健康診断の場合も同じです。

健康診断の結果は、一定期間(5年間など)の保存義務がある

会社は、健康診断の結果について「健康診断個人票」を作成し、法令で定められた期間、保存しなければなりません。例えば、法定の健康診断である「雇入れ時の健康診断」や「定期健康診断」の場合、健康診断個人票を5年間、保存する必要があります。

また、保存に当たっては情報漏洩などが起こらないようセキュリティーに配慮します。電子データならばアクセス制限やパスワードを設定する、紙媒体ならばキャビネットに施錠して保管するなど、適切な安全管理措置を講じます。

健康情報の取り扱いについては、健康情報取扱規程で定めることが望ましい

厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針では、社員の心身の状態の情報が、社員の健康確保や会社の安全配慮義務の履行といった目的の範囲内で適正に使用されるよう、「取扱規程」を策定し、心身の情報の取り扱いを明確化することが必要であるとしています。
取扱規程に定めるべき事項としては、次の9つがあげられています。なお、「心身の情報」の適正な取り扱いと「健康情報」の適正な取り扱いは同様に考えることができるので、以下では「健康情報取扱規程」に定めるべき事項として説明します。

  1. 健康情報を取り扱う目的、取扱方法
  2. 健康情報の取扱担当者、取扱担当者の権限、取り扱う健康情報の範囲
  3. 健康情報を取り扱う目的等の通知方法、社員本人からの同意の取得方法
  4. 健康情報の適正管理の方法
  5. 健康情報の開示、訂正等(追加、削除を含む)、使用停止等(消去、第三者への提供の停止を含む)の方法
  6. 健康情報の第三者提供の方法
  7. 事業承継、組織変更に伴う健康情報の引継ぎに関する事項
  8. 健康情報の取り扱いに関する苦情の処理
  9. 健康情報取扱規程の社員への周知の方法

健康情報取扱規程は、会社と社員が話し合いながら内容を検討し、完成したら社内の掲示板やイントラネットなどで周知することが望ましいです。また、健康情報取扱規程は就業規則等に該当するため、常時10人以上の社員を使用する会社が健康情報取扱規程を策定・変更する場合は、健康情報取扱規程に過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見書を添えて、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。

以上
(監修 弁護士 坂東利国)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年3月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

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