ペットの高齢化でニーズ高まる 「高齢ペット向けサービス」の動向

旬な話題を知りたい 2021年2月25日

高齢ペット向けサービスにビジネスチャンス

犬や猫に愛情を注ぐ「ペットの家族化」が進む中、新たな課題として顕在化しつつあるのがペットの高齢化です。犬の平均寿命は14.48歳、猫は15.45歳となっており、ペットの平均寿命はここ30年で2倍程度に延びたともいわれています(ペットフード協会「令和2年 全国犬猫飼育実態調査」。2020年10月時点)。

ペットの高齢化で飼い主の世話の負担が増す他、飼い主自身もペットと共に年を取ることで、飼い主とペットの「老老介護」なども起こっています。こうした飼い主の困りごとを解決する「高齢ペット向けサービス」が誕生しています。

ペットショップなどペットビジネス関連の事業者にとって、高齢ペット向けサービスは新たなビジネスチャンスです。高齢ペット向けサービスを提供することで、従来の生体やフードの販売にとどまらず、ペットの一生をサポートすることができます。これは飼い主とそのペットが長期的に自社を利用することにつながるでしょう。具体的な高齢ペット向けサービスを整理しつつ、ペット業界を巡る動向を紹介します。

主な高齢ペット向けサービス

高齢ペット向けサービスにはさまざまなものがありますが、本稿で取り上げる高齢ペット向けサービスを整理すると次のようになります。

1)訪問看護・介護サービス

看護や介護が必要なペットを飼う利用者宅を訪問し、自宅で看護や介護サービスを提供します。

CARE PETS(ケアペッツ)もそんなサービスを提供する1社です。同社は、民間資格である動物看護師による訪問介護やペットシッターサービスを提供しています。人間の介護に携わってきた創業者が、ペットにも同様のサービスを提供することを目指して設立しました。動物看護師が自宅に訪問し、薬の飲ませ方や状態の観察、おむつの交換などを行う「訪問介護サービス」を、30分3000円から提供しています。

■CARE PETS■
https://care-pets.jp/

2)老犬・老猫ホーム

老人ホームに相当するような「老犬・老猫ホーム」であり、近年、普及しつつあるサービスです。環境省に登録されている老犬・老猫ホーム事業者(譲受飼養業)の登録数は、2019年4月時点で177カ所となっています。

流通大手であるイオングループのイオンペットも、老犬・老猫ホームを提供する1社です。同社は、千葉県千葉市にあるイオンモール幕張新都心店で「pecos幕張新都心店」という店舗を運営しています。ペットショップや動物病院、トリミングサービスなどに加え、「ペットケア」いう老犬ホームを提供しています。
10歳以上の高齢の犬や、持病・障害がある犬などが受け入れの対象です。食事や排せつのサポート、体調管理などの他、体調に変化があったときには獣医師への相談後、適切な診察や治療を行えるようにしています。

■pecos幕張新都心店■
https://www.aeonpet.com/pecos/makuharishintoshin/

24時間体制や手作りの食事など、手厚いサービスを売りにする事業者もあります。「DOG PARTNERS」という老犬ホームを運営するエモーショナル・イノベーションは、犬のストレスを軽減させるため、個室を用意しているのが特徴です。栄養バランスを考慮した食事や、月に1度の定期健診など、充実した飼育体制を打ち出しています。
料金体系は犬種や預かる期間によりますが、体重が8キロまでの小型犬を終身一括で預ける場合は180万円です。

■DOG PARTNERS■
http://dog-partners.jp/

なお、全国の老犬・老猫ホームの情報を紹介するウェブサイト「老犬ケア」は、全国の老犬ホームの利用料金を発表しています。2016年の調査結果ではあるものの、全国の老犬ホームの平均的な料金は、入居初期費用として入所金が15万7545円、保証金・医療費が8万896円、年間利用料金として56万6407円となっています。

■老犬ケア■
https://www.rouken-care.jp/

3)預かりサービス

短期、長期、生涯と期間別のペット預かりサービスを提供する事業者も少なくありません。dog studio LOVE WOOF!!(ラブワン)の場合、ペットホテル、長期預かり、生涯預かりサービスを提供しています。生涯預かりの場合、小型犬の年間料金は83万6000円となっています。
なお同社は、1年以上の長期預かり、または生涯預かりの場合に限り、里親探しの代行を無料で実施しています。

■dog studio LOVE WOOF!!■
https://www.lovewoof.co.jp/

また、新型コロナウイルス感染症のまん延を背景に、感染者が飼育するペットを預かるサービスも登場しています。ペット保険を専門に取り扱うアニコム損害保険などを傘下に持つアニコムホールディングスは、飼い主が新型コロナウイルス感染症に感染し、隔離された際、飼っているペットを無償で預かる「#StayAnicom」プロジェクトを実施しています。同社が保有する施設の一部を開放し、飼い主が隔離されたり入院したりする間、ペットを無償で預かり、獣医師などの同社の社員が世話をします。

■アニコムホールディングス■
https://www.anicom.co.jp/

4)ペット保険

人間と同様に、ペット向けの保険商品も登場しています。ペット保険を専門に取り扱うペット&ファミリー損害保険は、入通院だけでなく、高額な手術・長期治療なども補償する「げんきナンバーわんスリム」を提供しています。同商品は、1日当たりの限度額制限や、支払い回数制限がないことや、10歳以上の保険料は変動しないなど、高齢ペットを飼育する飼い主のニーズに適したものになっています。

■ペット&ファミリー損害保険■
https://www.petfamilyins.co.jp/

5)ペットドック

前述のイオンペットは、系列のイオン動物病院などで、ペット向けの健診サービスであるペットドックを実施しています。基本プランである「基本ドック」は、全身検査や尿、血液検査などを行うもので、2万4000円で提供しています。

■イオンペット■
https://www.aeonpet.com/

また、一部の動物病院では、高齢のペット向けのペットドックも提供しています。右京動物病院では、一般的なペットドックのメニューに加え、歯石の除去や胃カメラ、CT検査なども行う「プレミアムスケーリングコース」を9万5000円で提供しています。

■右京動物病院■
https://www.ukyo-ah.com/

6)スマートトイレなどのIoTサービス

スマートトイレなどのIoT機器を通じて、ペットの健康状態を把握し、健康維持などに役立てるサービスを提供している事業者もあります。

猫向けのヘルスケア事業を手掛けるトレッタキャッツでは、スマートねこトイレ「トレッタ」の販売や関連サービスを提供しています。スマートトイレはセンサーにより、体重や尿量など健康指標を自動で計測する機器です。データに異常値があった場合、飼い主にアラートを出す他、データから予測される症状も併せて知らせる機能があります。
同社では、スマートトイレの販売に加えて、別途サービスの利用料金を月額980円(猫1頭の場合)で提供しています。

■トレッタキャッツ■
https://tolettacat.com/

高齢ペット関連の支出は年々増加傾向に

高齢ペット向けサービスが拡充している背景には、ペットの飼い主たちの動向の変化があります。

1)ペット関連の支出

総務省統計局「家計調査(家計収支編)」によると、ペット関連の支出は次の通りです。なお、高齢ペット向けサービスの支出は、サービスの内容により「動物病院代」または「他の愛玩動物関連サービス」に含まれています。

図表から、ペット関連の支出は増加していることが分かります。この背景には、ペットが飼い主にとって家族同然の存在になり、飼育環境の改善や、医療サービスへの支出が増加していることなどがあります。

2)高齢ペットの飼い主の認識

ペットの火葬や葬儀などの情報を紹介するWebサイト「メモリアルなび」を運営するイオンペットが、高齢(一般的に6~8歳以降)の犬もしくは猫の飼い主に実施したアンケート調査によると、犬の飼い主の18.5%、猫の飼い主の23.1%が、「介護が必要」と回答しています。

また、必要とされる介護として、排せつの介助、歩行や散歩のケアなどが挙げられています。人間同様、ペットも高齢化すると、排せつの介助や足腰の弱体化に伴う歩行や寝たきりに対するケアが必要なようです。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年1月14日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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