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【睡眠改善を通じた健康経営】企業が取り組める、従業員の睡眠の質を高めて生産性を向上させる方法

旬な話題を知りたい 2021年11月25日

従業員の健康改善支援を通じて勤労へのモチベーションアップを図り、生産性向上を目指す「健康経営」。健康経営のさまざまな取り組みの中で、この記事で取り上げたいのは「睡眠」です。
実は、睡眠は従業員の仕事のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。従業員の睡眠改善を支援することは健康経営の大切な取り組みとなりますし、生産性向上も期待できます。

睡眠不足と仕事のパフォーマンスの関係

●1979年 米国スリーマイル島での原発事故
●1986年 スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故
●1989年 アラスカでのタンカー座礁による原油の大量流出事故

これらの大事故には、ある共通点があるといわれます。それは、従事者の睡眠不足による人的なミスが原因だと指摘されていることです。
事の大小はありますが、睡眠不足はどの会社にとっても人ごとではありません。大事故には至らないまでも、「寝不足で頭がはっきりせず、仕事に集中できない」といった状態は、誰もが経験したことがあるはずだからです。
特に日本人は、世界的にも睡眠時間の短さが指摘されています。ヘルスケアデバイスを手掛けるフランスの企業Withings(ウィジングズ)が先進国14カ国の睡眠時間を調査した結果、世界平均は7時間8分だったのに対し、日本は6時間22分で、調査国中最短でした。
睡眠不足は、睡眠時間という「量」だけではなく、「質」とも関わっています。比較的長時間睡眠をとっている人でも、睡眠時無呼吸症候群や不規則な入眠時間帯などの睡眠の「質」によっては、日中に眠気を感じてしまったり、集中力が続かなかったりすることも分かってきました。こうした、

「出勤はしていても、心身の不調によって従業員の能力が十分発揮できていない」状態を「プレゼンティーズム」

と呼びます。「プレゼンティーズム」がまん延した職場では、従業員が生き生きと働くことができず、結果として業績にも悪影響を及ぼしかねません。そうした意味で従業員の睡眠の量と質の向上支援は現代の経営課題と言えるのです。

従業員の睡眠不足が企業活動に与えるリスク

1)労働災害の発生

睡眠不足だと注意力が散漫になり、さまざまな問題を引き起こします。例えば、交通事故を起こした運転手に対する米国の調査によると、事故発生前の24時間以内に7時間以上の睡眠をとっていた人と比べ、5〜6時間だった人は、事故の発生率が1.9倍に上がり、4時間未満の人は11.5倍まで跳ね上がるという結果もあります。注意力の低下を防ぎ、労働災害を防止するという観点からも、従業員の睡眠不足の解消は重要であることが分かります。

2)生産性の低下

ある研究結果では、6時間睡眠を2週間続けると、2晩徹夜した状態と同程度の作業効率低下を招いたと報告されています。また、起床後17時間を超えた状態での作業能力は、酒気帯び運転時と同程度まで低下するという研究結果もあります。
従業員の睡眠不足が生産性を低下させ、生産性の低さが長時間労働の原因となり、さらに従業員の睡眠不足につながる、という悪循環を生んでしまいかねません。

3)従業員の心身の健康への悪影響

厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、短時間睡眠が続くと抑うつなどが出現することや、慢性的な寝不足状態にある人は糖尿病や心筋梗塞、狭心症などの生活習慣病になりやすいことが指摘されています。
また、1日の労働時間が11時間を超え、十分な睡眠がとれない人の場合、労働時間が7~8時間の人に比べ、約5年後のうつ病の発症リスクが2.4倍ほど高かったという調査結果もあります。
厚生労働省が示している「精神障害の労災認定」では、心理的負荷の総合評価で「強」となる要素として、「発病直前の3カ月間連続して1カ月当たりおおむね100時間以上の時間外労働」などを含めています。

4)結果的に長期休職や離職につながる可能性も

ここまで紹介してきたようなリスクを踏まえると、従業員の睡眠不足は、短期的には作業能力の低下につながり、長期的には労働災害や心身の健康悪化によって、長期休職や離職の原因となり得ることが想定できます。
これらのことから、従業員の睡眠不足を生み出す職場環境や、睡眠不足となっている従業員を放置しておくことは、経営リスクであると言えるのです。

経営者の実践で従業員の睡眠改善を図る

従業員の睡眠不足を改善するために、まずは経営者が率先して睡眠改善を図ることが大切です。実際、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEOは、「8時間寝ることを優先している。よく考えることができ、よりエネルギーを得て、気分が良くなる」と語っています。また、スポーツ選手ではありますが、メジャーリーグで大活躍している大谷翔平選手も複数のメディアで、「寝るのは好き。かなり睡眠は大事」「睡眠が不足すると2日後くらいに身体に悪い影響が出ます」などとコメントしています。
経営者自らが十分な睡眠をとることを実践してパフォーマンスを上げ、それを従業員に向けて発信することが、社内の睡眠時間に対する考え方を変えるきっかけになるのではないでしょうか。
加えて、従業員に対して睡眠の重要性を啓発するために、専門家を招いて社内睡眠セミナーなどを開催するのもよいでしょう。

仕組みで従業員の睡眠改善を図る

従業員が休息時間を確保できるように、会社の制度を変更することもできます。例えば、「勤務間インターバル制度」を設ければ、終業時間から次の始業時間まで10時間以上の連続した休息時間をとりやすくなります。従業員の時間を「就業時間」で拘束するのではなく、「休息時間」を固定してしっかり休ませるという、発想の転換で従業員の睡眠改善を図ることができます。

この他、ヨーロッパなどで採用されている「シエスタ」のように、昼食後に適度な睡眠(昼寝)を促すことで、従業員の睡眠不足を解消し、午後の業務の生産性向上につなげることもできます。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年10月4日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
祢津 悠紀 (ねつ・ゆうき)

経済ライター・編集者。
1983年生まれ。経済誌の編集記者を経て、経営者コミュニティ運営に携わる。ビジネスリーダーへのインタビューを中心に、紙・webメディアにて取材・執筆。

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